井ノ口 仁一 教授(機能病態分子学)

糖尿病はよく耳にする病気ではありますが、実際、どんな病気なのかよく知られていないのが現状です。
私たちの体には「インスリン」という物質を受け取ると、血液中のブドウ糖を脂肪として蓄える細胞があるのですが、この仕組みがうまく機能しないのが糖尿病です。摂取した糖を蓄えることができないので尿として排出されてしまうわけです。「インスリン」というのは血液中のブドウ糖を内臓へと取り込み、血糖を下げる働きをすることができる唯一のホルモンなのですが、成人で多い2型糖尿病の場合、この取り込みをするための「スイッチ」が本来ある場所から移動してしまい、取り込む能力が落ちてしまうことがわかりました。私たちは2007年にこのメカニズムを解明したことが糖尿病治療への大きな一歩になり、世界中から注目を集めています。

●体の中で起きている異常事態を解明する

さらに研究を進めていくと肥満がインスリンの効果を弱めることも発見しました。肥満や細胞内で起きている炎症は代謝異常を起こします。ここからインスリン抵抗性だけでなく、過食を引き起こすレプチン抵抗性やアレルギー、そのほかの糖尿病合併症が起こることも解明されてきました。病気には必ず原因があり、体内で起きている異常事態を知ることが治療の第一歩なわけです。
この結果を元に製薬メーカーとの薬の開発や早期診断法の開発などを進めています。また、糖尿病のメカニズムを見ていくと、運動がインスリンの働き方に影響することがわかりました。運動することで筋肉でブドウ糖や脂肪の利用が促進され、血糖値が低下、さらに、インスリンの働きがよくなり、血糖コントロールもよくなるのです。治療には薬だけでなく、運動、食事といった多方面からの取り組みが必要になります。ただ、不思議なことに肥満がそのまま糖尿病に結びついたり、肥満だからといって糖尿病が重篤化するということではありません。個人差が大きく、その人の基礎代謝量や年齢、遺伝など様々な要素が関わるのです。病気一つに対して、薬学、医学の知識を組み合わせて解決策を模索することが重要です。

●医+薬が作り上げる未来の医療

そこで今後は東北医科薬科大学として、附属病院の医師との連携を図り、患者さんの血液データ収集を行い、さらなる解析を行っていきます。より多くのデータでさらに発症メカニズムを掘り下げることができれば、よりよい治療薬の開発や新しい予防対策につながります。
いつの日にか指先からほんの少しの血液を採取するだけの簡単な検査一つで生活習慣病のリスクが判明し、オーダーメイド治療ができるような未来が来ることを目標にこれからも研究を進めていきます。

●研究室について

機能病態分子学教室は東北薬科大学に分子生体膜研究所が創設された2006年よりスタートしました。細胞膜の情報伝達の要であるマイクロドメインに存在するスフィンゴ糖脂質(糖脂質)の生合成制御機構の解明と生活習慣病、聴覚機能、免疫機能などにおける病態生理学的意義についての研究を進めています。

>>機能病態分子学 研究室サイト

次回のインタビューは、大野 勲 教授(医学教育推進センター)

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