大野 勲 教授(病態生理学)

気管支ぜんそくは年齢問わず患者数が増加している病気であり、日本だけでも400万人もの人が苦しんでいるといわれていますが、よい治療薬が開発されているにもかかわらず、過去30年間で患者さんの数は増加しており、さらに重症化・難治化する患者さんが増える傾向にあります。
通常、ぜんそくを引き起こす要因には、風邪などの感染症や、ダニやハウスダストなどのアレルゲン、タバコの煙といった気管支に直接影響するものが多いのですが、重症化する要因には、精神的ストレスや肥満といった気管支に直接作用しないものも知られています。さらに、男性と女性では女性のほうが重症化しやすい傾向にあります。一方、ぜんそくになりやすい同じような体質(遺伝子)を持っていても環境や性別の差で発症や重症度が違うことが報告されています。薬や治療法の開発には、病気のしくみ、発症や重症化の原因を環境因子と遺伝子情報を考慮しつつ、細胞分子レベルで読み解くことが大変重要になります。

なぜストレスを感じることでぜんそくが悪化するのでしょうか?実はオピオイドという物質が関係しています。脳がストレスを感じると脳内のオピオイドが受容体がオピオイドとの結合により活性化されることで、ストレスホルモンが分泌され、アレルギー症状が引き起こされるのです。つまり、この受容体とオピオイドとの結合を防ぐ薬物を投与することで、ストレスを原因とするぜんそくの悪化が治療可能となるわけです。
ストレスの感じ方における個人差はオピオイドの受け皿であるオピオイド受容体の個人差に関係していて、その個人差は受容体の遺伝子情報に組み込まれていることがわかっています。
DNAを調べることにより、各個人の病気の原因を特定し、それぞれの患者さんに対してより効果的・特異的な治療法や薬、そして最適な予防策を立てることが可能になるわけです。

●これからの医療の可能性はチームで作りあげる

本学に医学部が新設されたことにより、大学病院としてより一層チーム医療教育に注力していきたいと思っています。本学は、附属病院を持つ唯一の薬科大学として、薬剤師を育成をしてきました。薬学部の設置基準として病院は必須ではないのですが、チーム医療の一員としての薬剤師をより効果的に育てる環境として附属病院を設置しました。これにより薬剤師だけでなく、医師、看護師などの医療スタッフが一丸となってチームとして学生を育て上げることができるようになりました。
数年後には医学部の学生さんは本学附属病院だけでなく、東北の地域病院での臨床実習を迎えます。私は、医師として教育そして医療の現場を見てきて、これからはますますチーム医療が求められていく中、チーム医療の教育に必要なことは医学部や薬学部などの多様な医療系学生が教育の中で時間と空間を共有すること、そして学生たちが様々なプロフェッショナルたちと常にコミュニケーションをとることだと思っています。同じ病院で働いていても、医師、薬剤師、看護師、理学療法士とでは役割目線も、患者との関わり方も大きく異なります。学生たちには、臨床実習では、医療現場を患者さんを中心に職種の垣根を越えた一つのフィールドとして体感してほしいと思います。


次回のインタビューは、加藤  正 教授(医薬合成化学)

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