リレーインタビュー

加藤 正 教授(医薬合成化学)

がんは今や日本人の死因の第1位で、2人に1人ががんで亡くなっています。これは、これまで死因として多かった他の病気が少なくなったというわけではなく、これらの病気を治せるようになったことが主な理由です。この事実の背景には、医療技術や薬物治療の顕著な進歩が関係していますが、すべてのがんを治す特効薬を開発するに至っていないのは、いまだにがんのメカニズムが解明されていないからです。そこで私たちの研究室では、天然物を活用した分子標的抗がん剤の研究を行い、がん治療の特効薬の研究を行っています。
まず、分子標的抗がん剤とはなんでしょうか?これはガン細胞を分子レベルでとらえ、これを標的として効率よく、ピンポイントで作用する薬のことです。薬がガン細胞だけに効くようになれば、副作用をより少なく抑えながら治療をすることが可能になります。

●合成に必要な要素は”独創性”と”複雑さ”

まず天然物の化学合成を行い、ここからさまざまな構造をもつ化合物を系統的に作っていくことが創薬の第一歩です。化合物を作るには、まず合成ルートを導きだすわけですが、目指すのは特異的で独創的な化合物です。既存の薬とは違い、これまでの手法や概念にとらわれない化合物を作っていく必要があります。基本パターンができれば、少しずつ違う何通りものパターンの化合物を作ることができ、それらを評価し、さらに複雑な合成を行っていきます。構造が複雑であればあるほど合成は難しく、成功率が低くなるわけですが、この複雑さがとても重要です。シンプルな化合物というのは、薬としては体内のさまざまな箇所に容易に作用してしまうことがあるので、病気ではないところにも効いてしまう、つまり副作用となりやすいわけです。
だから化合物はピンポイントで効くように複雑に、さらに大量に製造しやすい構造にする必要があります。創薬を考えるときには、必ず製造のことまで考慮しなくてはなりません。薬の開発には莫大なお金がかかりますので製薬メーカーは市場価格と向き合いながら、開発、そして製造方法を模索するのです。創薬を目指す私たちは、そういった背景も考えながら、より良い開発候補化合物を作ることが必要になります。


●共同研究により広がる可能性

現在、東北大学加齢医学研究所との共同研究を行い、大学発そして日本発の画期的な分子標的抗がん剤の開発を目指しています。今後は、本学の医学部や附属大学病院とも連携して薬の開発に取り組んでいきたいと考えています。薬を作る研究と、病気を治す研究、これが一緒にできることで大きな成果が生まれると期待しています。

●研究室について

有機合成化学をベースに決定的な医薬品が開発されていない病気に対する「新しい、より優れた医薬品」を開発することが、私たちの研究の大きな目標です。

>>医薬合成化学 研究室サイト


次回のインタビューは、久下 周佐 教授(外科学第二<呼吸器外科>)

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