リレーインタビュー

久下 周佐 教授(微生物学)

鉄がサビてしまったり、切ったりんごや桃が赤茶色になってしまうことを酸化現象と呼びますが、この現象は私たちの体の中でも起きています。人間は酸素を取り込み、食事の栄養素を燃やしてエネルギーを作っているのですが、この際に活性酸素が副産物として排出されます。この活性酸素は毒性を持っていて、ウイルスや細菌を攻撃する大事な役割があるのですが、増えすぎてしまうと健康な細胞やDNAも傷つけてしまうため、体の老化現象を引き起こすだけでなくガンにもつながります。これを酸化ストレスといい、活性酸素が原因であることがわかっているものの、そのメカニズムは未だ解明されていません。そこで私たちの研究室では細胞がどのように活性酸素に反応しているのかを明らかにして、薬の開発につなげることを目指しています。
これまでに活性酸素種の一つである「過酸化水素」の 感知するメカニズムを明らかにしてきました。過酸化水素は膜透過性が高いため細胞の外から細胞内にすぐに取り込まれ、細胞を構成しているたんぱく質、脂質、核酸を酸化させダメージを与えます。
この酸化と戦うための役者をそろえるために最初に必要なのが感知機構です。過酸化水素の感知と抗酸化するメカニズムを明らかにしたことが今後の医療技術に大いに役立つことを期待しています。


●C型肝炎ウイルスの違いを見極めて戦いに挑む

また、C型肝炎ウイルスについても研究しています。C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こるC型肝炎は7割の方が慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行します。肝臓は自覚症状がないまま数十年という月日をかけて病気が進むため、「沈黙の臓器」と呼ばれ、肝がんで亡くなる方は毎年3万人ともいわれています。そのうちHCVの血液製剤などの輸血で一時期は200万人いたC型肝炎ですが、特効薬ができたことによって完治が見込めるようになりました。肝がんになる傾向に高い場合があることがわかりました。これはC型肝炎ウイルスの遺伝子やC型肝炎ウイルスの作るコアたんぱく質の違いによって、毒性が高いことが原因です。私たちは肝がんになりやすいHCVウイルスの遺伝子がどのように細胞にストレスを与え、肝細胞がんを誘発するのか、そのメカニズムの解明を研究し、増殖を阻害するたんぱく質が存在することを発見し、北里大学との共同研究によりどの化学物質が作用するのかを選定するスクリーニングを行いました。
今後は医学部や附属病院との連携を図り、患者さんの検体でさらなる研究を進めていくことが可能になるでしょう。

●研究室について

細胞がどのように活性酸素種を感知し次の反応につなげているかを明らかにすることで、様々な病気を理解し治すクスリの開発につなげることを目指しています。
また、C型肝炎ウイルスたんぱく質がどのように肝細胞がんを誘発するのかというメカニズムの解明研究にも取り組んでいます。


次回のインタビューは、近藤 丘 教授(生理学)

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