分子認識学教室
研究内容
人類最強の敵「癌」を倒すべく

分子認識学教室では,細胞同士の「認識」に関わる糖結合性タンパク質(レクチン)の,「腫瘍細胞に対する相互作用及び抗腫瘍活性の発現メカニズムの解明」あるいは「膜タンパク質中のレクチンドメインの機能解明」を目的として,いくつかのテーマで研究を行っている.
 
抗腫瘍薬への応用を目的としたレクチンに関する研究
 ウシガエルなどのアカガエル属のカエル卵には,シアル酸結合性レクチン(SBL)が含まれている.SBLとリボヌクレアーゼ(RNase)のアミノ酸配列には相同性が認められ,SBLにはRNase活性が観察されている.また,SBLには抗腫瘍作用が認められており,この作用はSBLの「細胞表面のシアル酸を含む糖鎖を認識して結合する」レクチン活性と「細胞の生存に必要なRNAを分解する」RNase活性が協働することにより発揮されると考えられている.しかもこの作用は,腫瘍細胞にアポトーシスと呼ばれる細胞死を引き起こす. SBLによるアポトーシス誘導機構には,「SBL受容体に対するSBLの結合」および「SBLのRNase活性によるRNAの分解およびSBLを発信源とするアポトーシスシグナルの伝達」が重要な課題である.白血病細胞や悪性中皮腫細胞などの腫瘍細胞での,SBLレセプターの解明およびアポトーシスシグナル伝達のメカニズムに関する研究が進行中である.
 ナマズなどの魚卵には,ラムノース結合性レクチン(RBL)が含まれている.ナマズ卵由来RBL(SAL)は285アミノ酸から成り,95残基ずつの互いに相同性の高い3つのドメインから成る繰り返し配列を有するタンパク質で,バーキットリンパ腫細胞(RajiやDaudi)の糖脂質グロボトリアオシルセラミド(Gb3)に選択的に結合し,この細胞を短時間で縮小させる.しかし,細胞死は誘導しないユニークな性質を持っている.また,SALはこれらの細胞の細胞周期を停止させ,細胞増殖を阻害する働きもある.SALを利用して糖脂質糖鎖の情報伝達機構を明らかにできる可能性がある.
 現在,想定されている機構を下記の図に示す.
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
糖鎖による新しい情報伝達機構の解明を目的とした膜タンパク質中のレクチンドメインに関する研究
 Latrotoxin(クモ毒)レセプター(LAP)はGタンパク質共役型受容体ファミリーの一つで,その構造中にSALのドメインと類似の配列(レクチンドメイン)が含まれていることが知られている.Latrotoxin のLAPへの結合によって,LAPのクラスターが形成される.この現象に,レクチンドメインが関与するか否か興味がもたれるところである.レクチン分子が細胞同士の相互作用にどのように寄与するかを検討するための,良いモデルになると考えられる.
 
  リンク
リボヌクレアーゼ活性をもつレクチン(レクザイム)
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(左)細胞膜に発現させたGFP(Green fluoresence protein)
融合型受容体タンパク質
(右)Caveolin-2の発現部位(赤)