立体分子構築及び機能性分子設計

球状分子構造を基盤とする立体分子構築

生体による生理活性化合物の分子認識には、イオン性相互作用、水素結合のように分子の特定の位置との相互作用が高い選択性を発揮するために重要な存在であるが、それとともに、分子の形状認識に関与する広い意味での疎水性相互作用が高い親和性を発揮するには重要な存在である。広く研究が行われている分子認識の化学(ホストーゲストの化学)の目的も生体内の分子認識機構の理論化とその応用にあると私は考えている。私は受容体―リガンドの特に疎水性相互作用が活性応答に非常に大きな要因であることを、これまでの活性物質研究から認識した。特に、新規の立体的疎水的構造単位の開発におけるカルボラン化合物の高い活性は、その球形の形状が受容体の疎水性ポケットにステロイド骨格の代わりにフィットしていることを示している。受容体とリガンドの疎水性相互作用も受容体タンパクの疎水性部からの水の排除による安定化、π―π相互作用、CH−π相互作用など多くの要因により成立している。あるいは受容体自身の高次元構造への規定もこれらの効果によっている。私は、上記のカルボラン化合物の特徴的な性質、球状の立体形状、特定位置への官能基化による立体規制と変換反応の容易さ、種々の金属との配位性などを利用して、3次元的分子構築を行い、分子内、分子間の疎水性相互作用による立体構造の安定化評価、分子を内孔に取り込むカプセル状分子の設計合成、機能性分子の設計、合成を行っている。

1,3,5-tris(2-phenyl-o-carboran-1-yl)benzeneの結晶構造 Tetrahedron Lett. 2001)

ホウ素クラスター含有液晶の設計、合成と機能

要約



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