薬学教育センター

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第10回 東北薬科大学生涯教育講演会

(記念講演会)
日時: 平成19年6月16日(土) 14:00~17:00
会場: 東北薬科大学講義棟 701講義室
テーマ: 「感染症の現状」

講演1

「感染症クライシス」
-感染危機管理システム構築の重要性とその意義-
  東北大学大学院医学研究科内科病態学講座

感染制御・検査診断学 教授 賀来 満夫 先生

講演2

「新型インフルエンザと肺炎球菌感染症」

長崎大学名誉教授 伴帥会愛野記念病院名誉院長 松本 慶蔵 先生

 
参加費:無料
 
薬剤師研修センター認定: 2単位
日本病院薬剤師会生涯研修認定:1.5単位


講演会要旨

講演1 要旨

「感染症クライシス -感染危機管理システム構築の重要性とその意義-」

 東北大学大学院医学研究科内科病態学講座
 感染制御・検査診断学 教授      賀来 満夫

 

 公衆衛生の普及や優れた抗菌薬の登場などにより一見制圧できたかに見えた感染症は再び私たちの前に大きな脅威として蘇ってきた。すなわち、21世紀となった今日においても、MRSAや多剤耐性緑膿菌などの薬剤耐性菌やレジオネラなどの環境微生物による感染症、さらにはSARS、鳥インフルエンザなどの新興感染症など、次々と新たな問題が出現してきており、今や感染症対策は世界中のすべての医療機関における最重要課題となっている。  
 
 事実、感染症の発症は原疾患に悪影響をもたらすばかりか、入院日数の長期化や医療費の増加など、医療の質の面からも医療経済の面からも大きな問題となりえる。さらに、感染症は原因微生物が伝播するため、単に個人の疾患にとどまらず、医療施設全体、さらには地域全体にまで感染が伝播し、広範囲にその影響が及ぶこととなる。すなわち、感染症は個人だけでなく医療関連施設を含めた地域社会全体における危機:クライシスそのものであり、医療施設内のみならず地域において共同で感染症対策に取り組んでいく必要がある。
 
 このような背景のなか、多くの施設で感染対策チームICTが組織化され、感染症対策が実践されているが、膨大な業務のなかで、必ずしも効果的な活動がなされていないのが現状である。ここでは、迫り来る感染症の危機:感染症クライシスに対し、どのように対処していくことができるのか、「サーベイランス」による現状把握およびアウトブレイクの早期認知、「リスクアセスメント」による効果的な対策の実践、「エビデンス」に基づき、かつ「コンプライアンス」が期待できる対応の必要性、「地域ネットワーク」の構築の重要性、など、今、我々に求められている「感染危機管理システム」構築における最重要ポイントについて言及を加えるとともに、薬剤師の果たすべき役割について概説を加えたい。

講演2 要旨

「新型インフルエンザと肺炎球菌感染症について」

 長崎大学名誉教授
  伴帥会愛野記念病院名誉院長 松本 慶蔵

 

 新型インフルエンザの発生を疑うものはいないが、臨床的にいかなるものであるかについて専門家によって大きく異なっている。
 
 基礎医学者を中心に、現在高病原性トリインフルエンザウイルスから直接感染を受けた患者の臨床像がそのままに流行するであろうと危機を訴える人々がいるが、果たしてそうであろうか?新型インフルエンザのヒト間の流行で過去に最大のものはスペインかぜであり、新型インフルエンザに凝されるが、1918~1919年代の世界と現代を等値に置いている事も誤りである。交通事情は大正年間と現在では全く異なり、そのスピードは速やかであるが、抗ウイルス薬があり、公衆衛生事情は著しく改善され、二次感染を防止する抗菌薬は十分である。流行初期にワクチン産生株が得られ、新しい方法でワクチン産生も急速に用意されるであろう。新型インフルエンザ対策は冷静に対処する事こそ最も重要である。その間の演者の考えを率直に説明したい。
 
 現在の基礎医学者の多くの人々は、新型ウイルス肺炎は全てARDSを呈するものと考えているが、この事実は高病原性H5N1トリ型感染肺炎とスペインかぜのウイルスの再生ウイルス実験を動物にて再現した結果によるものである。
 
 しかし、1918年の米国のインフルエンザの最大の死因は二次的細菌性肺炎によるものであるとの詳細な報告がBrundage J FによりLancet infections Dis.に昨年なされた。その時の二次的細菌の主要なものは、肺炎球菌、インフルエンザ菌、溶連菌であり、特に肺炎球菌である。
 
 最近の研究では、インフルエンザに二次感染する肺炎球菌の重要性とそのメカニズムが詳細に検討されている。耐性肺炎球菌に対する対策と共に、抗インフルエンザ薬(オセルタミビル、ザナミビル)の有用性(並びに新しい抗ウイルス薬も含めて)を肺炎球菌感染防止も加えて述べ参考に供したい。

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