薬学教育センター

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東北薬科大学創立70周年記念生涯教育講演会

日時: 平成21年10月31日(土) 14:00~17:00
会場: 東北薬科大学講義棟 70周年記念講堂

講演1

「薬物療法において薬効・毒性発現に影響を及ぼす要因:
 薬物代謝酵素誘導の分子メカニズムについて」

東北薬科大学環境衛生学教室 教授 永田  清

   

講演2

「統合失調症の病態解明と治療開発の新たな潮流」

東北大学大学院医学系研究科 精神神経学分野 教授 松岡 洋夫 先生

 
参加費:無料
 
薬剤師研修センター認定: 2単位
日本病院薬剤師会生涯研修認定:1.5単位


講演会要旨

講演1 要旨

「薬物療法において薬効・毒性発現に影響を及ぼす要因: 
 薬物代謝酵素誘導の分子メカニズムについて」

 東北薬科大学環境衛生学教室   永田 清

 

 薬物の効果あるいは副作用・毒性発現には、大きな個人差が存在することが知られているが、これらの副作用・毒性発現を回避し、適切な薬効を得るために患者個人に合った薬物療法が求められている。薬物動態学的な観点から、患者個人に合った薬物療法を行うためには、予め薬物の至適な血中濃度を予測することが重要である。これらの個人差の主な原因に、現在まで薬物代謝酵素の遺伝子多型が考えられ、全世界的なプロジェクトとして遺伝子解析が行われてきた。ところが、実際これらの遺伝子多型によってすべての個人差が説明できないことも明らかとなってきた。一方、薬物代謝酵素の特徴として、その酵素活性は環境因子によって大きく影響を受けることが挙げられる。その一つとして、薬物代謝酵素は外来物質により酵素活性阻害を受けたり、あるいは酵素誘導を受けること、さらに病気や年齢などの生理的な変化の影響を受けやすいことである。
 
 演者は薬物療法における個人差を解明する一環として、薬物代謝酵素の誘導の分子メカニズムを解明するために、これらの遺伝子の転写活性化について研究を行ってきた。これらのタンパク質の誘導は主に肝臓と小腸において認められ、特に近年、小腸における酵素誘導も薬物相互作用を引き起こすことが判明し大きな問題となっている。また誘導には薬物によって活性化を受けたレセプターが酵素遺伝子の転写活性化を起こすことによって引き起こされる。中でもaryl hydrocarbon receptor (AhR)を初めとして、近年pregnane X receptor (PXR)およびconstitutive androstane receptor (CAR)などの複数の核内レセプターが関わっていることが明らかとなっている。本講演では、薬物代謝酵素の中でも最も問題となっているCYP1A2とCYP3A4の誘導分子メカニズムおよび演者らが開発した誘導評価系を用いることで見いだした新規誘導分子メカニズムについて紹介する。

講演2 要旨

 「統合失調症の病態解明と治療開発の新たな潮流」

 東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野 松岡 洋夫

 

  1950年代に抗精神病薬であるクロールプロマジンが登場して以来、統合失調症の薬物療法は発展し続けてきた。統合失調症は通常若年期に発症し、幻覚や妄想などの精神病症状と社会的機能障害とで特徴付けられ、回復は可能だが再発しやすい慢性疾患である。現在は、薬物療法と心理社会療法を組み合わせた包括的治療により、精神病症状は緩和され社会復帰もその程度は様々であるが可能になった。しかし、病態の本質ともいえる社会的機能障害については治療法の進歩にも関わらず十分改善されておらず、患者の約三分の一は重症の機能障害が続き、薬物療法導入以前と比べてこの比率は変わっていない。薬理学的には、第一世代抗精神病薬の主にドパミン遮断作用が精神病症状を緩和するが、機能障害と関係する陰性症状や認知障害に対しては効果が低かった。近年、第二世代抗精神病薬の登場でドパミン以外の神経伝達系が注目され、機能障害の改善が期待されたが不十分なままである。現在、治療抵抗性患者に対して期待されている治療として、最近登場したクロザピン治療と、心理社会療法の一つである包括的地域生活支援プログラム(ACT)がある。
 
 ところで、近年、世界的にメンタルヘルスの重要性が叫ばれ、本邦でも自殺予防対策の観点から関心が高まっている。しかし、メンタルヘルスの中でも最も本邦が立ち遅れているのは、若者に焦点を当てたメンタルヘルスサービスである。例えば、精神障害患者の75%は18歳以前に何らかの予兆を示すため、この領域への国家的施策が急務である。こうした中で、統合失調症の早期発見、早期治療に関する研究がこの15年の間で飛躍的に進展し、これに伴って発症過程の病態解明がすすんでいる。特に、症状出現から治療開始までのタイムラグが疾患の予後、転帰に影響を与えることや、陰性症状や認知障害が精神病症状出現以前から見られることが明らかになってきた。認知障害と関連したもう一つの新たな潮流として、認知改善を標的としたこれまでとは全く異なる創薬の領域が登場してきたことが挙げられ、早期介入とともに統合失調症の治療は新たな時代を迎えようとしている。

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