薬学教育センター

第16回 東北薬科大学生涯教育講演会

日時: 平成22年6月12日(土) 14:00~17:00
会場: 東北薬科大学講義棟 70周年記念講堂

講演1

「最新のがん薬物療法の進歩と課題」

東北大学加齢医学研究所 臨床腫瘍学分野教授 石岡 千加史

   

講演2

「がん化学療法とチーム医療」

神戸大学大学院医学研究科 薬剤学分野教授 平井 みどり

 
参加費:無料
 
薬剤師研修センター認定: 2単位
日本病院薬剤師会生涯研修認定:1.5単位


講演会要旨

講演1 要旨

 「最新のがん薬物療法の進歩と課題」

東北大学加齢医学研究所臨床腫瘍学分野  石岡 千加史

 

 がんの分子生物学と創薬研究の進歩により新しい分子標的薬が次々に開発され、がん薬物療法は21世紀になって急速に進歩しつつある。これまで、難治性であった固形腫瘍(肺癌、胃癌、大腸癌、肝癌、乳癌など)に対して、複数の抗体薬(トラスツズマブ、ベバシズマブ、リツキシマブなど)と小分子化合物(ゲフィチニブ、ニロチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、エベロリムスなど)が生存期間の延長やがんの再発を抑制する効果が示されているほか、PARP1阻害薬など様々な有望な薬剤が臨床試験の途上にある。また、がん薬物療法の進歩のもう一つの側面に分子マーカーの登場がある。現在、固形腫瘍の分子標的薬の適応に関わる分子マーカーが日常診療に導入されている(乳癌におけるHER2, 非小細胞肺癌におけるEGFR変異および大腸癌におけるKRAS変異)。分子マーカー研究は、費用対効果の改善、より有効な薬剤の効率的な創薬のために今後益々必要になる。一方、がん薬物療法は薬剤の種類や適応症が多様化し、治療の選択や副作用の管理に以前よりも高い専門性が求められている。このような背景から、講演では(1)主に固形腫瘍における分子標的薬の臨床試験成績について、(2)固形腫瘍の分子マーカーについて、(3)がん薬物療法のマネジメントと課題について概説する。

講演2 要旨

「がん化学療法とチーム医療」

神戸大学医学部附属病院薬剤部
平井 みどり

 

  近年のがん化学療法はめざましい進歩を遂げており、疾患の中には化学療法によって治癒が期待できる例もある。がん化学療法に用いられる抗悪性腫瘍薬は、作用機序が多彩であり、多剤併用で用いられることも多く、薬物動態や薬力学的な個人差が効果や副作用に大きく影響する。
 
 がんの治療は、伝統的な手術療法だけではなく、術前術後の化学療法や放射線療法などを組み合わせる、いわゆる集学的治療が一般的である。がん化学療法に用いられる複数の抗悪性腫瘍薬には、様々な組み合わせ(レジメン)が存在し、投与方法、投与経路も多岐にわたる。そのため、薬学的な管理が必須になっている。また、新しい抗悪性腫瘍薬である「分子標的薬」の使用は、劇的な効果と共に新たな副作用をもたらした。今日では、抗悪性腫瘍薬の使用に伴う副作用症状の軽減のために用いられる薬物の種類も増え、さらに早期からの疼痛コントロールが推奨されており、麻薬に加えて多くの鎮痛補助薬が使用されている。また、支持療法が積極的に行われるようになり、そこには副作用軽減などの肉体面だけでなく、精神面のサポートなどがん治療に伴うQOL低下要素を軽減する多様なアプローチが含まれる。このように現在のがん治療には、薬剤師が関与すべき局面が急激に増加している。
 
 現在我々の病院では、がん化学療法のレジメン登録に薬剤師が積極的に関わり、診療科医師と協議して適切ながん化学療法を実践している。緩和ケアのチームにも参加して、新たな鎮痛補助薬の効果を評価し、また外来化学療法室では医師・看護師とチームを組んで患者の治療と効果・副作用のモニタリングを行っている。このようにチーム医療を成功させるためには、学部学生の間からのチーム医療教育が必要であり、神戸大学医学部では、医学科、保健学科、そして神戸薬科大学の学生が、チームで学習に取り組むIPW(多職種協働)教育を実践している。学生時代のチームビルディングを、卒後の臨床でどのように生かすか、それが目下最大の課題である。

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