薬学教育センター

第23回 東北薬科大学生涯教育講演会

日時: 平成26年7月12日(土) 14:00~17:15
会場: 東北薬科大学講義棟 70周年記念講堂

講演1

「薬剤師として知っておきたい性機能障害の知識
-診療ガイドラインを中心として-」

東北薬科大学薬学教育センター長・教授 米澤 章彦

講演2

「医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために(9)
-循環器疾患の最新治療の現状と処方解析-」

東北薬科大学病院循環器センター長・病院教授 片平 美明

参加費 無料
参加資格 薬剤師、医療関係者、
本学 教員・学部学生・大学院生・研究生

薬剤師研修センター認定: 2単位
日本病院薬剤師会生涯研修認定:1.5単位


講演会要旨

講演1 要旨

「薬剤師として知っておきたい性機能障害の知識 -診療ガイドラインを中心として-」

東北薬科大学 薬学教育センター長・教授  米 澤 章 彦

 

男性の性機能障害とは、性欲、勃起、性交、射精、極致感のいずれか1つ、またはそれ以上が欠如するか、あるいは不十分なものと定義されている。これらの性機能に関する事象を基礎および臨床の立場から科学的に研究する集団として、わが国では日本性機能学会がリーダー的役割を果たしている。この分野における画期的な出来事はやはり、勃起不全(ED:Erectile Dysfunction)の治療を目的としたホスホジエステラーゼ5(PDE-5)阻害薬の登場であろう。発売が開始された1998年、この年のノーベル医学生理学賞を勃起の信号物質である一酸化窒素(NO)の発見とその情報伝達機構の解明に寄与した3名の薬理学者が受賞したことはまだ記憶に新しい。これ以後、性機能障害に関する研究は加速し、同時に一般の方々のEDに対する感心が一気に高まった。

このような流れの中、2008年日本性機能学会から「ED診療ガイドライン」が出版され臨床医のED診療に貢献するとともに、薬剤師をはじめ多くの医療従事者のEDに関する知識修得のためのテキストとして使用されてきた。その後、国内外の研究の進展により多くの事象が明らかとなり、2012年に初版の3倍以上の大幅増ページとなる改訂が行われている。

主な改訂点を列挙すると、1)リスクファクターの項において従来から指摘されていた加齢、喫煙、高血圧、糖尿病、肥満/運動不足、うつ病以外に、慢性腎臓病(CKD)と睡眠時無呼吸症候群(SAS)が追加された。特筆すべきは、重大なリスクファクターである心血管疾患に関して「EDが心血管疾患の前兆である」という視点が加えられ、別項として取りあげられたことである。この理論的根拠は所謂、「血管サイズ説」である。これまで薬剤師の方々から受けた質問の中で最も多かったのが「勃起のメカニズム、特に血管系との関わり」に関するものであることから、この点を踏まえて「EDが心血管疾患の前兆である」について説明を加えたい。

また、2)改訂版の薬物療法では「偽造PDE-5阻害薬」の項が追加された。これは日本性機能学会と製薬企業の共同調査からウェブサイトを通じて入手したED治療薬の多くが偽造薬であり、患者への危険性が懸念されたからである。海外では覚醒剤や糖尿病治療薬を含有するものも摘発されており、重篤な低血糖発作をきたした症例が報告されている。医師だけでなく、私達、薬剤師も偽造薬剤の危険性を説いて患者の健康を守る必要があり、この点も本講演で触れるつもりである。

講演2 要旨

「「医師の処方を理解し,適切な服薬指導をするために(9)
-循環器疾患の最新治療の現状と処方解析-」

東北薬科大学病院 循環器センター長・病院教授  片 平 美 明

 

循環器疾患に対する医師の処方を理解し,適切な服薬指導を行うためには最新治療の現状についての知識を持つことが不可欠である.循環器疾患の治療については,この十数年の間に極めて急速に進歩した分野がいくつかあり,そのほとんどは薬剤治療を含めたガイドラインが多数の臨床研究のエビデンスにより塗り替えられているのが現状である.

たとえば,心不全の治療薬はかつては利尿剤やジギタリスを中心とした強心剤が主流であったが,現在ではACE阻害剤,β遮断剤が治療の主役となり,また心不全の新しい治療として,心臓再同期療法(CRT)が,また心機能の極めて悪化した患者の突然死を防ぐために植え込み型除細動器(ICD)の移植が広く行われるようになって来ている.このような治療は確実に生命予後を改善し,加えて疾病の再発を防ぎ,再入院を繰り返すことによる心不全の増悪を防いでいる.

狭心症,心筋梗塞といった虚血性心疾患の分野では,冠動脈ステントの移植によるインターベンション治療が広く行われ,また,副作用の少ない新しい抗血小板剤が使用されるようになっている.また,抗癌剤,免疫抑制剤をステントに塗布したポリマーに含有させ,ステント治療の最大の問題点であるステント内再狭窄をほぼ解決させつつある.今後の問題点は,一度発症した狭心症患者のさらなる動脈硬化病変の進行をどのようにしたら防ぐことができるかであるが,このような視点から,脂質代謝改善のための薬剤が再発の防止のために広く使用されているのが現状である.

不整脈治療の分野では,以前から使用されてきた抗不整脈剤の投与が,不整脈の種類によっては症状を改善するものの,生命予後の改善には結びつかないというセンセーショナルな研究報告があり,ガイドラインが大きく書き換えられることとなった.現在,不整脈治療はカテーテルアブレーション(電極カテーテルを用いた治療)等の不整脈の根治治療と脳血栓塞栓症等の合併症の予防に重点が移ってきている.とくに心房細動の血栓塞栓症の予防治療については,近年いくつかの臨床研究の報告があり,従来投与されてきたアスピリンの投与が心房細動の血栓塞栓症に無効であるデータが示されている.現在,心房細動による脳血栓塞栓症の予防は以前より使用されているワーファリンと近年広く用いられている新しい抗凝固療法薬(NOAC)により行われている.

上に述べたように,循環器領域の薬剤治療は新しい治療法と密接にリンクしており,循環器疾患の処方に対し適切な服薬指導を行うためには,最新治療についての理解は不可欠と言える.本講演では,具体的な処方の内容とそこから想定される循環器疾患の最新治療を解説し,加えて実際に行われた治療の概要について紹介したい.
 

<講演2で使用されたスライドの一部>
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