薬学教育センター

第26回 東北薬科大学生涯教育講演会

日時: 平成27年6月13(土) 14:00~17:15
会場: 東北薬科大学講義棟 70周年記念講堂

講演1

「薬系大学新コアカリキュラムにみる薬剤師のフィジカルアセスメント」

東北薬科大学薬剤学教室教授 鈴木 常義

「薬剤師によるフィジカルアセスメントの必要性と重要性」

東北薬科大学保健管理センター長・教授(医師)
大河原 雄一

講演2

「薬剤師によるフィジカルアセスメントの実践
-がん薬物療法を中心に-」

宮城県立がんセンター薬剤部 土屋 雅美

「フィジカルアセスメント研修後の薬剤管理指導業務」

国立病院機構仙台西多賀病院薬剤科 齋藤 京之

参加費:無料
参加資格:特になし

薬剤師研修センター認定: 2単位1)
日病薬病院薬学認定薬剤師制度(研修番号III-1):2単位2)
宮城県病院薬剤師会生涯研修認定:1.5単位
※申請予定の方には、1)と2)のいずれかのシールをお渡しします。
(両方同時にお渡しすることはできません)


講演会要旨

講演1-1 要旨

「薬系大学新コアカリキュラムにみる薬剤師のフィジカルアセスメント」

東北薬科大学薬剤学教室 鈴 木 常 義

 

 薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年12月25日改訂)は、平成27年度から各大学においてこれに基づく教育が開始されました。改定のポイントは、医療人である「薬剤師として求められる10項目の基本的資質」を設定し、教育戦略は学習成果基盤型教育(outcome-based education)を基本としています。そして、「基本的資質」を身につけるための一般目標(GIO)を設定し、GIOを達成するための到達目標(SBO)を明示しています。 改定コアカリのF-(3)-①の【患者情報の把握】にフィジカルアセスメントが新たに追加されました。具体的には大学で指導する事項としてF-(3)-①-3「身体所見の観察・測定(フィジカルアセスメント)の目的と得られた所見の薬学的管理への活用について説明できる。」とF-(3)-①-4「基本的な身体所見を観察・測定し、評価できる。(知識・技能)」の2つが実務実習に行く前に大学で学習する内容として示されました。さらに病院・薬局での実務実習としてF-(3)-①-7「患者の身体所見を薬学的管理に活かすことができる。(技能・態度)」がリンクする内容になっております。 大学では、「代表的な疾患」の事例を組み込んだシミュレーターもしくはシミュレーション教材を利用し、身体所見の観察とフィジカルアセスメントを学びます。実習施設では、大学で学習したフィジカルアセスメントを活用して患者の身体所見を副作用や薬効と関連付けて考察する経験をさせてもらう機会があると大変うれしいと思います。 これらの内容を基に本学における事前学習での取り組みについて現時点の計画を述べさせていただきます。

講演1-2 要旨

 

「薬剤師におけるフィジカルアセスメントの必要性と重要性」

東北薬科大学 保健管理センター

 大河原 雄一

 

 現在、高齢者人口と心筋梗塞や糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、がんなどの非感染性疾患(Non-communicable Disease; NCD)の増加が全世界的に問題になっており、それに伴い医療のあり方が大きく変化しつつあります。その代表的なものが「先制医療」と「再生医療」で、どちらの概念も近年の全ゲノム関連解析(genome-wide association study; GWAS)やiPS細胞の研究成果、さらには環境因子によるエピジェティク変化と疾患発症との関連性が明らかになってきたことによると考えられます。
 
 特に「先制医療」は、これまで主に集団を対象とした予防医学とは異なり、個人の遺伝子的特徴や過去の環境などを配慮してハイリスク群を選び出し、将来の疾患発症リスクに応じた適切な予防介入(生活習慣の改善、医薬品)を実施することで疾患あるいは重篤な合併症の発症を予防するまたは遅らせるという個の予防医学です。そこで使用される薬剤は、原因遺伝子やその遺伝子発現に関与する分子に特異的に作用するもので、iPS細胞などを用いて創薬され、個のレベルで効果や副作用について検討されたものが多くなるだろうと考えられます。そのような薬剤は、確かに投与前から高い効果は期待できるものの、副作用の発現、特に生体内で複雑な機序により発現してくるものをあらかじめ予想して適切に対応することに関してはこれまでの薬剤以上に困難になると予想されます。実際、すでに臨床応用されているいくつかの分子標的薬は、特殊な遺伝的背景と環境要因により想定外の重篤な副作用が発現することが明らかとなっていることから、個のレベルの「先制医療」が行われるようになれば、副作用の予防、早期発見、早期対応が可能な体制の整備がますます重要になってくるものと考えられます。そのような状況下、医療者の中で最も薬剤に関する専門的知識を有する薬剤師は、患者と薬剤の特殊性を考慮して効果のみならず副作用をそれぞれの患者個のレベルで評価して適切に対応するために必要なフィジカルアセスメントなどの能力を有することが益々要求されてくるものと予想されます。
 

 薬学部における薬剤師養成課程が6年制に移行するにあたり、患者の状態や検査所見を直接自ら観察することで適切な薬物療法を支援し、副作用に対して適切に対応できる薬剤師が医療の現場で強く求められるようになりました。それに対して、本学は宮城県病院薬剤師会や国立病院機構北海道東北ブロックと協力して早期からフィジカルアセスメント研修会に参加し、現在まで継続して行ってきています。その研修内容は、病態生理学的観点を重視したもので、「先制医療」などの新しい医療にも柔軟に対応できるものと考えています。今回の発表では、これまでのフィジカルアセスメント研修会の内容を紹介することで、今後医療現場で求められる薬剤師の能力をしっかりと身に付け、さらにスキルアップするための動機付けにして頂ければと考えています。

講演2-1 要旨

「 薬剤師によるフィジカルアセスメントの実践 -がん薬物療法を中心に-」

宮城県立がんセンター薬剤部 土 屋 雅 美

 

  がん薬物療法分野における薬剤師の役割は、抗がん薬の調剤、投与量や治療スケジュール等の確認、無菌調製等にとどまらず、副作用の確認や予防のための指導、また副作用出現時の支持療法の提案など、その活動内容は多岐に渡っている。薬剤師によるフィジカルアセスメントの主たる目的は、薬の効果確認と副作用の早期発見であるが、特にがん薬物療法においては、副作用を軽度なうちに発見し、重篤化を防ぐことで治療の中断や延期、投与量の減量による治療効果の減弱を回避することに寄与できると考える。
 
 本講演では、実際に病棟で経験した症例を基に、がん薬物療法の副作用に関するフィジカルアセスメントの実践について紹介する。

【症例1】
63歳男性。S状結腸癌術後、リンパ節再発に対し外来でFOLFIRI療法施行中。day8に腰背部痛訴えあり、骨転移疑いのため入院後精査加療予定としていたが、入院時に口内炎あると本人の訴えあり、口腔内を確認したところ白苔著明であった。持参薬としてヒドロコルチゾン酢酸エステル口腔内軟膏があり、口内炎に対し塗布していたとのことであった。
 
【症例2】
66歳女性。子宮体癌術後化学療法としてパクリタキセル+カルボプラチン療法施行するもアレルギーのため中止。ドキソルビシン+シスプラチン療法への変更目的に入院。day1はアレルギー症状の出現等なく経過していたが、day2よりめまい、眠気、手の震えなど症状出現し、翌day3に採血したところ血清Na;114mEq/Lと低値であった。
 
【症例3】
50歳女性。子宮肉腫術後化学療法としてゲムシタビン+ドセタキセル療法3コース目目的に入院。入院時に右第1趾の爪周囲に腫脹、発赤、排膿あり。左第1趾の爪周囲にも軽度色素沈着が認められた。術後より、血栓予防目的に弾性ストッキングを着用している。

 

講演2-2 要旨

「フィジカルアセスメント研修後の薬剤管理指導業務」

国立病院機構仙台西多賀病院薬剤科 齋 藤 京 之

 

 医薬分業が進む中、病院薬剤師が担う業務内容も大きく様変わりし、薬局内における調剤業務ばかりでなく、病棟における服薬指導業務も薬剤師の業務として広く認知されてきている。しかし、服薬指導業務を行なう際に目の前にいる患者の状態を実際に目で見て、あるいは触診などの方法により判断している薬剤師はどれくらいいるだろうか?フィジカルアセスメントは『身体的な情報を意図的に収集して判断する』ということであるが、医師や看護師ばかりでなく、薬剤師の業務にも必要なスキルとなってきている。
 

 そのような中、宮城県病院薬剤師会では病院薬剤師のスキルアップを目指し、様々なセミナーや研修会を行なっており、今回、2010年2月に開催された第一回フィジカルアセスメント研修会に参加したので、その内容を報告する。また、病棟での薬剤管理指導業務において、本研修会で習得した方法を活用した基本的な症例を経験したので、併せて報告する。
 

 フィジカルアセスメントは病棟薬剤師ばかりでなく、在宅医療を行い、服薬支援を行う調剤薬局の薬剤師にとっても不可欠なスキルとなる。今回の発表が皆様の今後の業務の一助となれば幸いである。

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