薬学教育センター

第33回生涯教育講演会

平成29年度生涯教育プログラムの一環として、「第33回東北医科薬科大学生涯教育講演会」を開催いたしました。
多数のご参加、ありがとうございました。

 

日時: 平成29年11月18日(土) 午後2:00~5:15
会場: 東北医科薬科大学講義棟(仙台市青葉区小松島4-4-1)

 

講演1

「心筋梗塞から心臓を守る虚血プレコンディショニングとその薬物治療への応用」

東北医科薬科大学薬学部 薬物治療学教室 教授 原 明義

 

講演2

「医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために(16)-皮膚疾患の薬物治療の現状と処方解析-」

東北医科薬科大学医学部 皮膚科学教室 教授  岡 昌宏
東北医科薬科大学薬学部 病院薬剤学教室 講師・東北医科薬科大学病院薬剤部 薄井 健介

 

・参加費 無料
・参加資格 特になし
・認定制度

日薬剤師研修センター認定:2単位
日病薬病院薬学認定薬剤師制度:(研修番号II-1)1単位、(V-2)0.5単位
宮城県病院薬剤師会生涯研修認定:1.5単位
 

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講演会要旨

講演1 要旨

「心筋梗塞から心臓を守る虚血プレコンディショニングとその薬物治療への応用」

東北医科薬科大学 薬学部 薬物治療学教室 教授 原 明義

 

虚血プレコンディショニング(IPC)とは、心筋が長時間の虚血状態に陥る前に、短時間の虚血状態があると、長時間虚血による心筋壊死が軽減する現象です。つまり、短時間の虚血により長時間虚血に対する耐性が生じる現象といえます。IPCは30年ほど前に米国の研究グループによる動物実験で見出され、その後多くの研究者によって確認されてきました。IPCの特徴は、その虚血心筋保護作用が極めて強力かつ持続的であり、さらにヒトにおいても認められることです。臨床では、急性心筋梗塞の発症前(24時間以内)に一過性の虚血、つまり狭心症があると、狭心症がない場合より心筋傷害が軽度で予後の良いことが知られています。
IPC効果のメカニズムが明らかになれば、新しい心筋梗塞治療薬の開発に繋がることが期待できます。そのメカニズムは未だ不明な点が多いのですが、現在最も有力なのは、先行する短時間虚血によって心筋細胞のミトコンドリア膜に存在するATP感受性Kチャネル(KATPチャネル)が開口するというものです。実際、IPC効果は高血糖やスルホニル尿素薬(とくにグリベンクラミド)によって減弱ないし消失しますが、それはグルコースやグリベンクラミドが膵B細胞のKATPチャネルだけでなく、心筋ミトコンドリアのKATPチャネルを遮断するためと考えられます。また、高齢者においてもIPC効果は発現しにくいと言われています。
一方、ニコランジルは、わが国で開発された狭心症治療薬であり、その分子中から一酸化窒素を放出する硝酸薬としての作用に加えて、KATPチャネルを開口させる作用を持っています。当初、ニコランジルの虚血心筋保護作用は、血管平滑筋細胞膜のKATPチャネル開口を介した冠動脈拡張によるとされていました。ところが近年の研究によると、血管平滑筋だけでなく、心筋ミトコンドリアのKATPチャネルを開口させる作用があり、むしろこの作用が虚血心筋保護に深く関っていると考えられています。ニコランジルのこの作用は、「プレコンディショニング様作用」あるいは「薬理学的プレコンディショニング」と呼ばれています。臨床においても、ニコランジルが心筋梗塞後の生命予後を改善するとの報告が数多くみられ、しかもその心筋保護効果は、本来のIPC効果と異なり、高齢者や高血糖においても減弱しにくいようです。心筋梗塞による死亡率は年々減少していますが、その背景にはIPCが関係しているかも知れません。

講演2 要旨

「医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために(16)-皮膚疾患の薬物治療の現状と処方解析-」

東北医科薬科大学医学部 皮膚科学教室 教授  岡 昌宏

 

皮膚疾患の中には水疱形成を主体とする疾患群があり、これらは水疱症と呼ばれる。水疱症は免疫学的異常を伴う自己免疫疾患群と遺伝子異常を伴う遺伝性疾患群に分けられ、ともに皮膚疾患の中では重症である。水疱症は約20年前までは病態がほとんど明らかにされておらず、他の多くの皮膚疾患と同様に臨床症状および病理学的所見により分類されていた。しかしながら、近年の目覚ましい分子生物学的研究により自己免疫疾患群ではその標的抗原が同定され、遺伝性疾患群では責任遺伝子が同定され、病態を原因分子からダイナミック、クリアカットに理解できるようになってきた。また、病態解明の進展とともに新しい検査法が開発され、以前に比べ診断がより簡便、かつ正確となってきた。自己免疫性水疱症の治療は、副腎皮質ステロイドの全身投与が第一選択で、これにより効果がみられることが多いものの、副腎皮質ステロイド無効例や効果減弱例が存在し、しばしば治療に難渋する。このような時は他の様々な治療を試すことになるが、どの治療を用いれば効果があるのかは個々の症例で異なり、事前に知ることは不可能である。この事実は、水疱症においては、病態解明が進んだとはいえ未だ明らかになっていない、個々の症例で異なる複雑な病態があることを意味する。

症例

61歳  女性
5ヶ月ほど前に足に皮疹ができ、近医皮膚科で治療を受けていた。その後、四肢のそう痒性皮疹が出現したため、別の皮膚科を受診して治療を受けていたが、症状の増悪が見られるため、当院皮膚科へ紹介された。

 

入院時持参薬
他院(内科)

Rp 1) レルベア100エリプタ30吸入用 1日1回 吸入

 
他院(心療内科)

Rp 2) フルニトラゼパム錠 1mg 1回2錠(1日2錠)
 1日1回 就寝前
Rp 3) ロフラゼプ酸エチル錠 1mg 1回1錠(1日2錠)
 1日2回 朝夕食後

 
当院皮膚科(入院2日前の外来で処方)

Rp 4) 0.05% グルコジンR水 消毒用
Rp 5) デルモベート軟膏0.05% 1日2回 皮疹に塗布
Rp 6) ミノマイシン顆粒 2% (100mg/包) 1回1包(1日2包)
 1日2回 朝夕食後
Rp 7) ニコチン酸アミド散 10% (0.5g/包) 1回1包(1日3包)
 1日3回 朝昼夕食後

 
入院開始時 治療薬
処方

Rp 1) プレドニゾロン錠 5mg 1日8錠(朝4-昼2-夕2)
 1日3回 朝昼夕食後
Rp 2) ネキシウムカプセル 20mg 1回1カプセル(1日1カプセル)
 1日1回 朝食後
Rp 3) ボナロンゼリー 35mg 1回1包(1日1包)
 1日1回 起床時
Rp 4) バクタ配合顆粒 (1g/包) 1回1包(1日1包)
 1日1回 朝食後
Rp 5) アンテベート軟膏0.05% 1日2回 紅斑部に塗布
Rp 6) テラジアパスタ5% 1日1回 びらん部に塗布

 
その後の治療

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