薬学教育センター

第8回 東北薬科大学生涯教育講演会

日時: 平成18年6月17日(土) 14:00~17:00
会場: 東北薬科大学講義棟 701講義室
テーマ: 「糖尿病の病態と処方解析」

講演1

「2型糖尿病におけるインスリン抵抗性とガングリオシド」

東北薬科大学機能病態分子学 教授 井ノ口 仁一

講演2

「医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために (3)」
     -糖尿病を中心とした処方箋解析-

東北大学病院糖尿病代謝科 講師 檜尾 好徳 先生

東北薬科大学臨床薬剤学 准教授 中村  仁

 
参加費:無料
 
薬剤師研修センター認定: 2単位
宮城県病院薬剤師会生涯研修認定:1.5単位


講演会要旨

講演1 要旨

「-2型糖尿病におけるインスリン抵抗性とガングリオシド-」

 東北薬科大学機能病態分子学教授  井ノ口 仁一

 

 近年、世界的に肥満者が増加するとともに、糖尿病も増加の一途を辿り、これらは社会的な問題にまでなりつつあります。このような肥満や日常のライフスタイルと関連の深い2型糖尿病はインスリン作用の相対的な不足が原因で発症します。多くの場合、全身のインスリン抵抗性が認められますが、以前は経験的にしか理解されていなかった肥満、過食あるいは運動不足と全身のインスリン抵抗性発症の関連性が、最近になって、分子レベルで解明されてきました。インスリン抵抗性は、「インスリン感受性の細胞または臓器が生理的レベルのインスリンに対する反応性が低下している状態」と定義され、2型糖尿病の病態生理の最も上流に位置します。
 

 これまで、単なるエネルギー貯蔵臓器としてしか捉えられてこなかった脂肪組織は、実はアディポサイトカインと総称される多彩な生理活性物質を産生する生体最大の内分泌臓器であることが知られるようになりました。特に、肥満における内蔵脂肪の過剰蓄積に伴う脂肪細胞の機能異常、すなわちアディポサイトカインの分泌異常(例えば、炎症性サイトカインTNFαの過剰分泌やアディポネクチンの分泌低下など)が、インスリン抵抗性を惹起し2型糖尿病や動脈硬化性疾患の多彩な病態の成因として重要な役割を果たしていることが明らかにされています。最近、白色脂肪組織においてマクロファージがリクルートされ脂肪組織中に侵入し炎症性サイトカインを分泌し、その結果インスリン抵抗性を惹起することが見いだされ、脂肪組織に潜在する骨髄系細胞の病態生理が注目されています。
 

 インスリン受容体はガングリオシド(スフィンゴ糖脂質)、スフィンゴミエリン、コレステロールなどの相転移温度が高い脂質群が集積して形成される細胞膜カベオラマイクロドメインにに存在しています。脂肪組織の主要なガングリオシドはGM3と呼ばれるものであり、5年前に我々は、TNFαで刺激した脂肪細胞や典型的な肥満糖尿病モデル動物の脂肪組織では、ガングリオシドGM3およびその合成酵素遺伝子の発現が著しく増加している事を見いだしました。その後の様々な検討で、インスリン代謝性シグナルの欠損はGM3の過剰蓄積によるインスリン受容体のマイクロドメインからの解離によるものであることが判りつつあります。我々の発見は、2型糖尿病などの生活習慣病の新たな病態像の解明に繋がるものと期待しています。

講演2 要旨

「医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために(3)」
 -糖尿病を中心とした処方箋解析-

  【医 師】東北大学病院 講師  檜尾 好徳

 

-糖尿病診療における各種処方について-
2002年の厚生労働省による糖尿病実態調査によりますと、わが国の糖尿病人口は約740万人、予備軍も含めると約1620万人まで増加しています。これはわが国の成人の約6人に1人と推定されますが,その中で十数年後に各種慢性合併症に悩まされる患者様が少なからず存在し,その精神的,肉体的苦痛,経済的損失は大きいものと思われます。糖尿病の最終的な治療目標は,「合併症に苦しむことなく健常者と変わりない生活を患者さんに送って頂くこと」です。この合併症の発生と進行の阻止のためには血糖コントロールが何よりも優先されます。そのための糖尿病治療は大きく食事・運動療法と薬物療法に大別されますが、薬物療法のためには経口糖尿病薬およびインスリンが頻用されています。前者として、スルフォニル尿素薬、ビグアナイド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド)などが使用され、後者として、超速効型、速効型、混合型、中間型、持効型の各種インスリンが繁用されています。
 
 ところでいわゆる「生活習慣病」として糖尿病、高血圧症、高脂血症などの疾患に関する予防法や治療に関して現在新聞や雑誌などのメディアによって毎日のように数多く取り上げられていますが、これらの疾患はそれぞれ動脈硬化性を促進して心筋梗塞(冠動脈疾患)や脳梗塞など致死性の高い疾患を導く因子と言われています。近年、さらにその源流に位置する病態として注目されてきたのが「肥満」です。現在のところ、内臓脂肪が蓄積する肥満が、インスリンの作用不足と絡み合い、さらに糖尿病、高脂血症、高血圧と拡がって動脈硬化を進行させて致死的な疾患を誘導するという説が有力とされています。そしてこれがとりもなおさず、「メタボリックシンドローム」の概念です。今回、ただ血糖を改善するための処方薬のみならず、糖尿病の患者さんにしばしば見られる合併症、とくに高脂血症や高血圧に対する処方薬も併せて御紹介させて頂きたく思います。

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