薬学教育センター

第9回 東北薬科大学生涯教育講演会

日時: 平成18年11月11日(土) 14:00~17:00
会場: 東北薬科大学講義棟 701講義室
テーマ: 「呼吸器疾患の病態と処方解析」 

講演1

「糖鎖と病気:肺気腫などの疾患におけるコアフコースの役割」

東北薬科大学細胞制御学 教授 顧  建国

講演2

「医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために (4)」
-呼吸器疾患(慢性気道疾患)を中心とした処方箋解析-

東北薬科大学病態生理学 教授 大野  勲

処方解析 東北薬科大学臨床薬剤学 講師 金野由美子

 
参加費:無料
 
薬剤師研修センター認定: 2単位


講演会要旨

講演1 要旨

「糖鎖と病気:肺気腫などの疾患におけるコアフコースの役割」

 東北薬科大学細胞制御学教授  顧  建 国

 

 ポストゲノム研究の時代に入り、DNA-RNA-蛋白質という古典的なセントラルドグマには従わない翻訳後修飾の研究が盛んになって来ました。その中でも糖鎖修飾は最も多く、実に60%以上の蛋白質が糖鎖付加を受けると考えられています。糖鎖は多くの膜タンパク質、たとえば細胞接着分子、増殖因子受容体またはサイトカイン受容体などを修飾し、その機能を制御します。コアフコースは糖タンパク質のN-結合型糖鎖の根元のGlcNAcにα1,6フコース転移酵素(Fut8)によって転移されるフコースです。これまでの研究から、このコアフコースは多くの糖タンパク質の機能制御に大きくかかわることが明らかになりつつあります。たとえば、抗体タンパク質IgGに付加されたこのフコース1個を取り除くと、その抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性が顕著に向上し、従来の抗体に比べ50~100倍以上高い抗腫瘍効果を示すことが明らかにされました。また、コアフコースの付加は、細胞接着・浸潤または癌化などの過程において変化することが報告されました。私達はFut8の欠損マウスを作成し、機能解析を行い、Fut8と肺気腫との間に関連性を突き止めました。Fut8の欠損マウスの肺組織における細胞外マトリクスの生合成および分解にかかわる遺伝子を詳細に解析し、肺の生理機能の維持を担う分解酵素であるマトリクスメタロプロテナーゼ(MMP)が著しく機能亢進していることを発見しました。さらに生化学的な解析から、TGF-βがその受容体と結合するのにコアフコースが重要であることを見出しました。これにより本来TGF-βにより抑制されるはずMMPの発現がFut8の欠損マウスの肺において増加し、肺胞の破壊、肺気腫へとつながるプロセスが浮かび上がりました。
 
 肺気腫は最近、慢性閉塞性肺疾患として世界的に患者が急増し、世界保健機関も警告している原因不明の病態です。治療は対症療法のほか肺移植しかなく、原因究明と根本的な治療法が求められています。Fut8欠損マウスの機能解析は、肺気腫にかかわる要因スペクトルの解明、また糖鎖による予防および治療薬の開発に繋がるものと期待しています。

講演2 要旨

「医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために(4)」
-呼吸器疾患(慢性気道疾患)を中心とした処方箋解析-

 【医師(呼吸器内科)】 
 東北薬科大学病態生理学 教授  大野  勲

 

患者さんにとって、診療は、医師を『入口』とし薬剤師を『出口』としたひとつの流れと言えましょう。患者さんにこの流れを安全かつスムーズに渡りきってもらう事がチーム医療の目的です。そのためには、我々医療人はこの流れの中で患者さんの情報をうまく「引き継ぐ」必要が有ります。医師と薬剤師の間、特に病院医師と薬局薬剤師の間、で言えば、現時点では院外処方箋が唯一の引き継ぎとなります。言い換えれば、院外処方箋を最大限に活用することが病院医師と薬局薬剤師のチーム医療ということになります。このチーム医療は、まず薬局薬剤師による医師への疑義照会で始まります。しかし、処方箋には病名の記載が無いなど、円滑な疑義照会を行うためには、解決すべき様々な難問があります。そこで、その一助として、具体的な症例/処方箋を前にした医師と薬剤師の公開討論の形で、疾病や医師の処方意図を理解して頂く機会を、本生涯教育講演会の中で設けてきました。
 
 今回は、呼吸器疾患、特に外来で長期に渡る薬物治療を必要とする疾患を中心に、症例を準備しました。Evidence-based medicine (EBM) 、個人的な経験ではなく統計学的に設計された臨床試験の結果に基づく医療、を具現化した「治療/管理のためのガイドライン」が種々の疾患で策定されています。疾患の解説では、このガイドラインを含めて話したいと思います。また、Evidenceに基づいた特殊な治療薬の使い方にも触れてみます。日々の臨床に少しでもお役に立てれば幸いです。

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