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病原体刺激により心臓血管特異的に細胞が浸潤する仕組みを解明(皮膚科学 宮部千恵講師)

<成果のポイント>

・ 動物モデルを用いて、病原体の刺激による自然免疫受容体を介した血管炎の発症機序を解明しました。
・ 臓器特異的な血管炎が生じるメカニズムの一端を明らかにしました。

 

<研究概要>

 血管炎に代表される自己免疫性疾患では、病原体を含む環境因子が発症要因となると考えられていますが、詳しい病態はわかっていませんでした。また、血管炎では炎症の起きる血管と起きない血管があることが知られており、なぜ特定の血管に炎症が起きるのかも不明でした。東北医科薬科大学医学部の宮部 千恵(みやべ ちえ)講師(皮膚科学教室)らの研究グループは、カンジダの細胞壁由来成分投与による血管炎マウスモデルを用いて、病原体による自然免疫の活性化が血管特異的な炎症を誘導する一連の機序を明らかにしました。①投与されたカンジダ細胞壁由来成分は、大動脈周囲の血管網に選択的に沈着し、自然免疫受容体Dectin-2を介して心臓マクロファージからCCL2を産生させ、CCR2陽性炎症性単球を大動脈起始部と冠動脈に誘導し、②炎症性単球は単球由来樹状細胞に分化し、血管炎中期にNLRP3インフラマソーム経路を介してIL-1bを産生し、③IL-1bが間葉系細胞のCXCL1とCCL2発現を促進し、血管にさらなる好中球や単球の集積を起こすことがわかりました。本研究により、血管炎の病因・病態の理解が進み、新たな病気の予防法や治療法の開発につながることが期待されます。

本研究成果は2019年7月29日付けでThe Journal of Clinical Investigation誌(doi: 10.1172/JCI123778)に掲載されました。