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DCIRは樹状細胞や破骨細胞で発現している受容体型の蛋白質ですが、これらの細胞の機能を制御していることが知られています。東北医科薬科大学医学部免疫学教室の海部 知則(かいふ とものり)講師は、東京理科大学生命医科学研究所実験動物学研究部門の岩倉 洋一郎(いわくら よういちろう)教授らの研究グループとの共同研究により、N型糖鎖末端のシアル酸修飾がないアシアロ二本鎖N型糖鎖がヒトおよびマウスDCIRの機能的リガンド(スイッチとして働く物質)であり、アシアロ二本鎖N型糖鎖とDCIRの相互作用は、樹状細胞の働きと破骨細胞の形成を抑制することを明らかにしました。また、実験動物にシアル酸を遊離させる糖加水分解酵素ノイラミニダーゼを投与することにより、実験的関節炎や実験的自己免疫性脳脊髄炎のような自己免疫疾患が改善されることを発見しました。本研究の成果は、糖鎖末端の修飾変化が免疫システムと骨代謝系の制御に関与しており、DCIRへの入力を増強することによって自己免疫疾患や骨疾患を治療できることを示しており、DCIRあるいはアシアロ二本鎖N型糖鎖を標的とした免疫・骨代謝疾患の新規治療法の開発に役立つことが期待されます。本研究成果は令和3年11月25日(木曜日)付け(米国東部標準時:令和3年11月24日(水) 10:00)に国際専門誌 Journal of Experimental Medicine誌のオンライン版に掲載されました。本研究は、JST戦略的創造研究推進事業CREST(105100000222)、日本医療研究開発事業AMED(16809407)、JSPS科研費(24220011、20H04954、23500489)の助成を受けて行われました。
DCIR and its ligand asialo-biantennary N-Glycan regulate DC function and osteoclastogenesis.
(DCIRとそのリガンドであるアシアロ二本鎖N型糖鎖は樹状細胞機能と破骨細胞形成を制御する。)
Journal of Experimental Medicine, 2021
Kaifu T*, Yabe R*, Maruhashi T*, Soo-Hyun Chung*, Tateno H, Fujikado N, Hirabayashi J, Iwakura Y (*equal contributor).
岩倉洋一郎(東京理科大学生命医科学研究所)
海部知則(東北医科薬科大学医学部免疫学教室講師)、矢部力朗(現千葉大学真菌センター)、丸橋拓海(現東京大学定量生命科学研究所助教)、鄭スーヒョン(東京理科大学生命医科学研究所助教)の4名は同等にこの研究に寄与した。
DCIRとアシアロ二本鎖N型糖鎖の相互作用による樹状細胞機能と破骨細胞形成を抑制するメカニズム
ノイラミニダーゼによりシアル酸を除去された二本鎖N型糖鎖とDCIRが結合すると、樹状細胞や破骨細胞に抑制のシグナルを伝達する。DCIRは細胞内に抑制の調節をする領域にITIMを持つ。
【用語説明】
注1. アシアロ二本鎖N型糖鎖:ガラクトースが露出した二本鎖N型糖鎖(図1a)。
注2. DCIR:Dendritic Cell ImmunoReceptor (樹状細胞免疫受容体)は抑制シグナルを惹起するC型レクチン受容体で、樹状細胞、マクロファージ等のミエロイド系細胞に発現。
注3. 破骨細胞:関節炎や骨再構築の過程において骨を破壊する(吸収する)役割を担う細胞。
注4. 樹状細胞:白血球の一種で、異物を取り込みT細胞に抗原提示することで、免疫反応の開始や免疫システムの維持を制御する細胞。
注5. ノイラミニダーゼ:糖鎖の末端に結合したシアル酸を切断除去する糖加水分解酵素。この酵素の処理によりアシアロ糖鎖を露出させるとが可能。
(研究に関すること) |
(報道に関すること) |