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◆オーファンGPCR注1であるGPR141が、免疫応答を負に制御する受容体であることを発見しました。
◆GPR141は樹状細胞や好中球等の免疫細胞に発現し、GPR141欠損は多発性硬化症(MS)注2の動物疾患モデルを増悪化させました。
◆GPR141は獲得免疫注3を制御する樹状細胞注4の抗原提示能制御に関与していることが示されました。
◆本研究の成果は、MSなどのヒト中枢神経系自己免疫疾患の病態理解と新規治療法の開発に貢献することが期待されます。
東北医科薬科大学医学部免疫学教室の澤邊敦哉(さわべ あつや、2022年度卒業、岩手県立胆沢病院勤務)、海部 知則(かいふ とものり)講師、中村 晃(なかむら あきら)教授らは、東京理科大学生命医科学研究所生体運命制御部門の後飯塚 遼(ごいつか りょう)教授らの研究グループとの共同研究により、オーファンGタンパク質共役型受容体(GPCR)注5(リガンドが同定されていないGPCR)であるGPR141がミエロイド系細胞に発現し、免疫応答を抑制的に制御することを明らかにしました。GPR141の機能不全により中枢神経系自己免疫疾患が増悪化することが明らかとなり、GPR141が多発性硬化症などの自己免疫疾患の増悪化因子であることが示されました。現在、承認薬の約30%がGPCRを標的とすることが知られていますので、GPR141は自己免疫疾患に対する新しい創薬標的となることが期待されます。
本研究成果は令和6年1月17日(水曜日)付け(米国東部標準時(冬時間):令和6年1月16日(火曜日)00:00)で国際専門誌Journal of Leukocyte Biology誌のオンライン版に掲載されました。
<用語解説>
注1. GPCR:G-protein coupled receptorの略。Gタンパク質共役型受容体と呼ばれ、細胞膜を7回貫通する特徴的な構造を持つ。神経やホルモンの受容体として機能するとともに様々な生体システムに関与する。
注2. 多発性硬化症(MS):中枢神経系における慢性炎症疾患のひとつ。自己免疫疾患であると考えられている。
注3. 獲得免疫:病原体を特異的に識別し、またそれを記憶をすることで同じ抗原に出会った際に効果的に病原体を排除する仕組み。
注4. 樹状細胞:病原体などの異物を取り込み抗原として提示することにより免疫応答を惹起させる免疫細胞のひとつ。
注5. オーファンGPCR:リガンドが同定されていないGPCR
The orphan G protein-coupled receptor 141 expressed in myeloid cells functions as an inflammation suppressor
(日本語名)オーファンGPR141はミエロイド系細胞に発現し炎症反応を抑制する受容体として機能する
掲載誌:Journal of Leukocyte Biology
Atsuya Sawabe, Shogo Okazaki , Akira Nakamura, Ryo Goitsuka, and Tomonori Kaifu