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薬学部 糖鎖構造生物学教室 長江雅倫講師の名古屋大学、ウィスコンシン大学との研究成果がPNAS Nexus誌に掲載されました

「遺伝病の原因遺伝子となる酵素の三次元の立体構造を解明し、進化的に保存されたメカニズムを発見」
名古屋大学と米国ウィスコンシン大学との共同研究により、糖鎖修飾不全による遺伝病の原因遺伝子の働きに関する研究成果が国際学術誌「PNAS Nexus」に掲載されました。

発表のポイント

● 先天性疾患アダムス・オリバー症候群の原因遺伝子であるEOGTが基質をどのように見分けているのかを三次元の立体構造から明らかにしました。

● アダムス・オリバー症候群の患者で見られた遺伝子変異が基質との結合を損なう変異であることを見出しました。

● 新しい基質を認識するモチーフを発見し、そのモチーフが類縁酵素で動物から植物まで進化的に広く保存されていることを見出しました。

研究の内容と成果

真核生物では、体の中で働く多くのタンパク質が様々な糖分子を適切に付け加えられることで、正常な機能を発揮します。このため、糖分子の付加が正しく行われないと重篤な疾患につながることがあります。EGF domain-specific O-GlcNAc transferase (EOGT)はタンパク質に糖分子を付ける酵素の一つで、特定のタンパク質の特定の部位(EGFドメイン)に糖(Nアセチルグルコサミン)を付加します。EOGTは先天性の遺伝子疾患である、アダムス・オリバー症候群の原因遺伝子の一つで、EOGTが正常に働かなくなると頭皮や四肢、血管系の形成不全が生じることが知られておりますが、EOGTの作用機序はよく分かっていませんでした。
 本学薬学部の長江雅倫講師は、名古屋大学大学院医学系研究科・糖鎖生命コア研究所(iGCORE)の岡島徹也教授、田嶌優子講師、米国ウィスコンシン大学・マディソン校のJiaoyang Jiang(ジャオヤン・ジャン)教授らとの共同研究で、糖転移酵素であるEOGTの結晶構造を明らかにし、新規基質認識モチーフを新たに発見しました。
 本研究では、EOGTが糖をつけるために必要な分子であるUDPと結合した状態の立体構造を明らかにしました。そして、アダムス・オリバー症候群で報告されていた三つの遺伝子変異のうち、一つはUDPとの結合に重要なアミノ酸の変異であること、もう二つはEOGTの立体構造の維持に重要なアミノ酸の変異であることを明らかにしました。さらに、EOGTがUDPを認識する際にUDPを「つまむ」役割を果たす、三つのアミノ酸(アスパラギンと二つのアルギニン)がN-R-R constellationと名付けた、非常に特徴的な空間配置を取っていることを見い出しました。このN-R-R constellationにおける三つのアミノ酸の空間配置は、EOGTが属するGT61ファミリー内で動物から植物まで普遍的に存在することを見出しました。このことは、生物が進化の過程で、UDPを介して糖を糖転移酵素に供与する仕組みを、共通して維持してきたことを示しています。
 この度の研究成果は、アダムス・オリバー症候群の病態理解の手掛かりとなるだけでなく、糖転移酵素群の進化や機能を解き明かす基盤となると期待されます。
 本研究成果は、2026年4月15日付米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)がオックスフォード大学出版局から創刊した『PNAS Nexus』に掲載されました。

論文情報

タイトル:Crystal structure of epidermal growth factor domain-specific O-linked N-acetylglucosamine transferase reveals a conserved N–R–R constellation for uridine diphosphate recognition in the GT61 family
著者名:Yuko Tashima , Masamichi Nagae , Jiaoyang Jiang , Tetsuya Okajima
掲載誌:PNAS Nexus
DOI:https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgag115

お問い合わせ先

◆研究に関すること
薬学部 糖鎖構造生物学教室
講師 長江雅倫
TEL: 022-727-0222
Email:nagae.masamichi*tohoku-mpu.ac.jp (*を@に置き換えて下さい)

◆取材に関すること
学務部 入試・広報課
TEL:022-727-0358
Email:koho*tohoku-mpu.ac.jp(*を@に置き換えてください)

名古屋大学のプレスリリースはこちら
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2026/04/post-986.html
東海国立機構iGCOREのプレスリリースはこちら
https://igcore.thers.ac.jp/news/1248-2.html