NEWS

LATEST NEWS

【プレスリリース】気管支喘息増悪の新たな危険因子を発見 ~精神的ストレスの受容に関わるミューオピオイド受容体遺伝子の一塩基変異が鍵~

【研究概要】 

 東北医科薬科大学 薬学研究科 病態生理学教室 大学院生 川上 佳織(かわかみ かおり)(現:東北大学病院薬剤部)、宮坂 智充(みやさか ともみつ)講師、高橋 知子(たかはし ともこ)教授、同医学部医学教育推進センター 大野 勲(おおの いさお)教授、中村 豊(なかむら ゆたか)教授、同衛生学・公衆衛生学教室 目時 弘仁(めとき ひろひと)教授らの研究グループは、ペンシルベニア大学、岩手医科大学、神戸大学、東北大学、帝京大学との共同研究により、精神的ストレスの受容に関わるミューオピオイド受容体1の一塩基多型2OPRM1 A118G, rs1799971)が気管支喘息の病態悪化の危険因子となることを明らかにしました。

 OPRM1 A118Gにおいて、遺伝子型(G/G)をもつ喘息患者さんでは、それ以外の遺伝子型(A/AまたはA/G)をもつ喘息患者さんと比べて、日常生活において感じている程度の精神的ストレス量において、気道が縮まりやすいことが明らかとなりました。さらに、同様の遺伝子多型(G/G)を持つマウスを用いた解析から、同多型が、気管支周囲のリンパ節において喘息免疫応答を悪化させていることが分かりました。本研究の成果は喘息増悪のリスク評価に役立ち、そのような一塩基多型を持った患者さんにおいて、より効果的に喘息増悪を予防できることが期待されます。

 本研究成果は20211027日付でAllergology International誌(日本アレルギー学会英文誌)電子版に掲載されました。本研究は、JSPS科研費(25461164, 17K09624)の助成を受けて行われました。

 

図1.OPRM1遺伝子の遺伝子型G/Gを有する患者では遺伝子型A/AとA/Gを有する患者と比較して気道過敏性が亢進している(気道が縮まりやすい)。 図2. 遺伝子型G/Gを有するマウスの傍気管支リンパ節ではIL-4サイトカインを産生する活性化T細胞と、記憶T細胞の数が増加している。

 

【補足説明】

注1. オピオイド受容体:オピオイド系薬物または生体内で産生されるリガンドと特異的に結合し、鎮静作用を発現するレセプター。μ(ミュー)、κ(カッパ)、δ(デルタ)の3種のサブタイプがある。精神的ストレスを受けると、体内ではミューオピオイド受容体のリガンドであるβエンドルフィンが産生される。リガンドと結合することによるミューオピオイド受容体の活性化は、精神的ストレスの情報を各種の臓器や細胞へ伝達する役目を担う。 

注2. 一塩基多型(SNP):SNPsingle nucleotide polymorphismの略。ゲノムのなかで個体(個人)間で一塩基のみ異なっている部位のこと。約30億塩基対あるヒトゲノムのうち、約1%の箇所に一塩基多型が報告されている。

 

【原論文情報】

The A118G single-nucleotide polymorphism in OPRM1 is a risk factor for asthma severity
(和訳:OPRM1遺伝子における118番目の塩基のAからGへの一塩基変異は喘息重症化の危険因子となる)

Kaori Kawakami, Tomomitsu Miyasaka, Yutaka Nakamura, Hirohito Metoki, Satoshi Miyata, Miki Sato, Ichiro Sora, Kohei Yamauchi, Kazuyoshi Kawakami, Julie A. Blendy, Tasuku Kawano, Hiroaki Shimokawa, Motoaki Takayanagi, Isao Ohno, and Tomoko Takahashi
(和訳:川上佳織、宮坂智充、中村豊、目時弘仁、宮田敏、佐藤美希、曽良一郎、山内広平、川上和義、Julie A. Blendy、河野資、下川宏明、高柳元明、大野勲、高橋知子)

Allergology International https://doi.org/10.1016/j.alit.2021.08.006

 

プレスリリース本文

 

【研究支援】

 本研究の一部は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金基盤研究(C)「ストレス誘発性喘息の病態発症に関与するオピオイド受容体遺伝子多型の解析(25461164, 研究代表者:大野勲)」、基盤研究(C)「ストレス喘息の病態発症におけるオピオイド受容体遺伝子多型内分泌免疫応答の解析(17K09624, 研究代表者:大野勲)」による支援を受けて行われました。

 

【発表者】

東北医科薬科大学 薬学研究科 病態生理学教室

薬学専攻 博士課程4年  川上 佳織(かわかみ かおり)

(現 東北大学病院 薬剤部)

 

【お問い合わせ先】

(研究に関すること)

東北医科薬科大学 医学部 医学教育推進センター
教授 大野 勲 (おおの いさお)
電話番号: 022-290-8875  (福室キャンパス)
Eメール:  iohno@tohoku-mpu.ac.jp

東北医科薬科大学 薬学部 病態生理学
講師 宮坂 智充 (みやさか ともみつ)
電話番号: 022-727-0127  (小松島キャンパス)
Eメール:  t-miya13@tohoku-mpu.ac.jp

(報道に関すること)

学校法人東北医科薬科大学 広報室

担当:金子(かねこ)、関根(せきね)

電話番号: 022-727-0357 (直通)

FAX番号: 022-727-2383