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【プレスリリース】AIDS治療開始後の呼吸不全を誘発していた 免疫細胞の働きを解明

【発表のポイント】

 東北医科薬科大学薬学部・病態生理学教室の河野資講師、高橋知子教授らとアメリカ合衆国イリノイ大学の井上誠准教授らのグループは、クリプトコッカス関連免疫再構築症候群(C-IRIS)の重大な呼吸不全が、免疫細胞(T細胞)の脳への侵入に起因することを解明しました。脳へ侵入したT細胞が神経細胞を傷つけ、脳から肺への神経ネットワークを切断するメカニズムを明らかにし、新しい治療薬のターゲットを提案するものです。本研究成果は2023年6月28日(グリニッジ標準時)に英科学雑誌『Nature Communications』に公開されました。
1.

【研究のポイント】

 クリプトコッカス注1関連免疫再構築症候群(C-IRIS)注2でおこる重大な呼吸不全の原因が肺の損傷によるものではなく、脳の損傷によるものであることを明らかにしました。
 C-IRISに伴う呼吸不全は、CD4陽性T細胞のCCL8-CCR5経路による脳への浸潤により発症することを明らかにしました。
 CD4陽性T細胞のエフリンB3とセマフォリン6Bの発現亢進が神経細胞形態変化の引き金となり、神経ネットワークが断裂することで呼吸不全になることを明らかにしました。
 CCR5阻害剤やエフリンB3/セマフォリン6Bを標的とする新しい治療法の開発が期待されます。

2.研究の概要と背景

【概要】

クリプトコッカス関連免疫再構症候群 (C-IRIS) は、抗レトロウイルス療法注3を受けている免疫不全患者に頻繁に発生する症候群です。この疾患は、呼吸不全を含む多くの重篤な症状を示し予後が極めて不良であります。研究グループはこれまでに構築したC-IRISの動物モデルを利用して、C-IRIS状態に関連する呼吸不全がCD4陽性T細胞の脳への浸潤に起因することを実証しました。CD4陽性T細胞はCCL8注4-CCR5注5応答性を利用して脳に侵入し、発現上昇したエフリンB3 よびセマフォリン6Bを使い、呼吸機能をコントロールしている脳孤束核 (NTS)神経の形態変化をもたらし、脳から肺への神経ネットワークの切断を引き起こすことを明らかにしました。この発見により、呼吸不全の発症メカニズムを標的としたC-IRIS治療薬開発が期待されます。


本プレスリリースの図は原著論文の図を引用、改変したものを使用しています。

【論文名】

英文タイトル:T Cell Infiltration into the Brain Triggers Pulmonary Dysfunction in Murine Cryptococcus-associated IRIS
(日本語名):クリプトコッカス関連免疫再構築症候群における肺機能不全は脳への T 細胞浸潤が引き起こす
掲載紙:Nature Communications
DOI:10.1038/s41467-023-39518-x

【著者名】

Tasuku Kawano, Jinyan Zhou, Haneen Salah, Andrea Dayal, Yuzuki Ishikawa, Shehata Anwar, Tomoko Takahashi, Katelyn Boetel, Kamal Sharma and Makoto Inoue

プレスリリース本文