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【プレスリリース】肝臓がんに対する新しい治療標的の可能性 〜葉酸代謝酵素の発現低下が肝臓がんの進展に寄与するメカニズムの解明〜

【研究概要】

東北医科薬科大学 薬学部 感染生体防御学教室の佐々木雅人 准教授らは、長崎大学医学部 山本一男 博士、近畿大学医学部 上田健 博士との共同研究により、栄養素のビタミンの一つである葉酸の代謝酵素の一つが、肝臓がんのがん進展抑制に寄与するメカニズムの一端を明らかにしました。また、この酵素遺伝子の発現が消失した肝臓がん細胞は、細胞内に存在するアデノシン一リン酸と類似の化合物に対する感受性が高いことを見出し、これが新たな抗がん剤となり得る可能性を示しました。
本研究成果は、令和5年8月18日付けで国際専門誌 Scientific Reports 誌に掲載されました。

【研究背景】

栄養素のビタミンの一つである葉酸は生体内で代謝を受け、プリンヌクレオチドの生合成注1、チミジル酸注2の合成、S-アデノシルメチオニン注3の合成、ホルミルメチオニン注4の合成、アミノ酸代謝など多様な反応に寄与することが知られています。これらの反応を仲介する酵素の一つにアルデヒド脱水素酵素1L1 (ALDH1L1)があり、主として肝臓細胞の細胞質に局在しています。これまでに、多くの肝臓がん組織ではALDH1L1遺伝子の発現が減弱していることや、ALDH1L1発現の低い肝臓がん患者では予後の生存率が低いことが知られていました。しかしながら、肝臓がん細胞におけるALDH1L1の役割については不明な点が多く残されていました。

~研究内容、今後の展望は下記リンク プレスリリース本文に記載~

【原著論文】

One-carbon metabolizing enzyme ALDH1L1 influences mitochondrial metabolism through 5-aminoimidazole-4-carboxamide ribonucleotide accumulation and serine depletion, contributing to tumor suppression.
掲載紙: Scientific Reports
https://doi.org/10.1038/s41598-023-38142-5

【著者】

佐々木雅人*、山本一男、上田健、色川隼人、武田洸樹、関根僚也、伊藤文恵、田中大、久下周佐、柴田信之 (*責任著者)

【用語説明】

注1. DNAの構成塩基の種類の内の一つ。プリンヌクレオチド生合成では、最終的にアデニル酸、またはグアニル酸が産生される。
注2. DNAの構成塩基の種類の内の一つ。ピリミジン塩基に該当する。
注3. 細胞内でのメチル化反応に寄与するメチル基供与体の一つ。
注4. ミトコンドリア遺伝子の翻訳開始に関与する化合物。
注5. プリンヌクレオチド合成中間体の一つ。5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチドの通称名。
注6. ZMPのヌクレオシド体。5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオシドの略称。
注7. アデノシン一リン酸 (AMP)と構造が類似している化合物群。ZMP、AICArもAMPアナログに該当する。

  プレスリリース本文

【本件に関するお問い合わせ先】

東北医科薬科大学 薬学部 感染生体防御学教室
准教授 佐々木 雅人
 TEL: 022-234-4181(小松島)
E-mail: kansenseitaibougyo@tohoku-mpu.ac.jp

【取材に関すること】
学校法人東北医科薬科大学 広報室
担当:金子(かねこ)、関根(せきね)
TEL: 022-727-0357(直通)
E-mail: koho@tohoku-mpu.ac.jp