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医化学教室と医学部6年生植木さんの研究成果がJournal of Biological Chemistry誌に掲載されました。

掲載論文概要

タイトル:Induction of the zinc finger transcription factor GATA2 promotes kidney inflammation‑related gene expression

著者:JunTakai, HinataUeki, SatoshiUemura(東北医科薬科大学 医学部 医化学教室)

 

論文のポイント

・医化学教室の高井淳講師および上村聡志准教授と、課題研究後も継続的に研究に取り組んだ医学部6年生植木陽向さんによる研究成果

・RNA-seq, CUT&TagおよびATAC-seqを用いた統合的な解析により、GATA2が腎炎症を促進する分子機序を解明

・腎尿細管細胞株において、GATA2の発現誘導は炎症関連遺伝子(Csf1Cxcl10Vcam1など)を転写レベルで増加 

 

研究概要

【目的】腎疾患における過剰な炎症反応は、疾患の進行や重症化の原因となります。転写因子GATA2DNA上のGATA配列を認識するジンクフィンガー型転写因子です。GATA2は腎臓では腎尿細管に発現して腎炎症に関与することが報告されていましたが、その詳細な分子機序は不明でした。そこで本研究では、GATA2が腎尿細管細胞において炎症関連遺伝子発現を制御するメカニズムを解明することを目的としました。

【方法】本研究では、腎尿細管細胞株を用いてドキシサイクリン誘導的にGATA2を発現する細胞株を新たに樹立しました。この細胞株を用いて、RNA-seqATAC-seqCUT&Tag解析を実施しました。さらに、マウス腎臓からGATA2陽性細胞を単離し、ATAC-seq解析を実施しました。

【結果】これらの解析により、GATA2Csf1Cxcl10Vcam1といった腎炎症関連遺伝子の発現を直接的に増加させることを明らかにしました。さらにAP‑1阻害剤T-5224を用いた解析により、これらの遺伝子の発現増加が抑制されるため、GATA2AP‑1の協調な作用が腎炎症に寄与している可能性が示されました。

【今後の展望】これらの知見は、腎炎症の分子基盤の理解を深めるとともに、GATA2を介した炎症経路が将来的な治療標的となり得ることを示唆します。本研究成果は米国の科学雑誌 The Journal of Biological Chemistry (JBC)2025 年7月号に掲載されました。本研究は JSPS 科研費 (18H05041, 24K10082)、武田科学振興財団、加藤バイオサイエンス記念振興財団および先進医薬研究振興財団の助成を受けて行われました。

 

用語解説

ATAC-seqAssay for Transposase-Accessible Chromatin using sequencingの略。オープンクロマチン領域を網羅的に検出する技術。本研究ではマウス腎臓のGATA2陽性細胞を採取してATAC-seqを行うことに世界に先駆けて成功した。

CUT&TagCleavage Under Targets and Tagmentationの略。転写因子やヒストンとゲノムDNAの相互作用を網羅的に解析する技術で、2019年に初めて報告された。本研究では実験条件の最適化を行うことで、世界に先駆けて腎尿細管系細胞株でのGATA2抗体を用いたCUT&Tagに成功した。

Csf1Cxcl10Vcam1:腎臓の炎症応答に関与する遺伝子。

AP‑1:炎症誘導に関与する転写因子。

T‑5224AP‑1の転写活性を抑える阻害剤。

 

雑誌名:Journal of Biological ChemistryJ.Biol.Chem.

オンライン先行公開:2025616

掲載日:20257 

DOI10.1016/j.jbc.2025.110372

論文へのリンク:

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0021925825022227?via%3Dihub

 

お問い合わせ先

JunTakai(東北医科薬科大学 医学部 医化学分野)

Email: j‑takai@tohoku‑mpu.ac.jp