医学部 研究室案内
Faculty of Medicine
Faculty of Medicine
川上 民裕 教授
(1)皮膚血管炎(IgA血管炎・皮膚動脈炎など)における発症機序の解明
(2)皮膚血管炎国際臨床試験ARAMIS(A randomized multicenter study for isolated skin vasculitis)日本代表施設
(3)ヒトiPS細胞由来メラノサイト(特許取得)を使用した白斑・悪性黒色腫の機序解明と美白化粧品の開発
(4)皮膚アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎・薬疹・蕁麻疹・食物アレルギーなど)患者における臨床研究
(5)Sturge-Weber症候群のGNAQ遺伝子検討から早期診断と治療への応用
(6)穿孔性皮膚症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの普及とその機序の解明
(7)皮膚エコーを使用した関節症性乾癬や関節炎の評価と病態マーカーとの関連
(1)血管炎は皮膚症状が初期に出るため、皮膚血管炎の発症機序を研究することは血管炎の早期発見・早期治療につながります。私たちは厚生労働省研究班員・皮膚専門医・アレルギー専門医の経験を活かして、2010年に皮膚血管炎診療アルゴリズム(川上アルゴリズム)を発表しました。
(2)アメリカ合衆国を中心とした臨床研究(ARAMIS研究)を行う唯一の日本施設として、新臨床研究法のもと2020年から参加しています。皮膚血管炎(IgA血管炎・皮膚動脈炎など)における発症機序を、臨床の切り口から解明します。
(3)皮膚の色を産生するメラノサイトは単独での培養が困難で、大量培養も不可能でしたが、私たちはヒトiPS細胞から、より大量で効率よく完成度の高いメラノサイトへの分化誘導に成功しました(特願2017-006673)。このヒトiPS細胞由来メラノサイトを使用して、美容皮膚科・白斑治療・悪性黒色腫治療・白皮症遺伝子治療への応用を進めます。2019年からは美白化粧品の成分を評価し、論文化しています。
(4)アトピー性皮膚炎では、最新治療として生物学的製剤が認可されました。その治療を基盤とした臨床研究からその病態を解明します。さらにアレルギーセンターの一角を担い、皮膚アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎・薬疹・蕁麻疹・食物アレルギーなど)の臨床研究を横断的に発展させていきます。
(5)Sturge-Weber症候群の原因遺伝子GNAQ遺伝子検査を行い、早期診断と治療への応用を進めます。
(6)日本皮膚科学会研究班長として完成させた穿孔性皮膚症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの臨床応用をします。
(7)2020年から新設された皮膚エコーを使用した関節症性乾癬やリウマチ性関節炎の評価と、病態マーカーとの関連をリウマチ専門医とともに検討します。
1年次前期 / 必修 / 1単位
皮膚科外来の診療業務の見学や医療現場における患者とのコミュニケーションの見学・体験。
「患者さん」と直接対峙する実臨床の場が体験でき、今後の意欲向上につながります。
3年次 / 選択 / 5単位
皮膚科学教室の特に研究分野に関与しながら、臨床医が進めていく研究に慣れ親しみ、医師になってからのリサーチマインドに対する理解を目標とする。
血管炎、ヒトiPS細胞由来メラノサイト、アトピー性皮膚炎、乾癬、膠原病などを対象とした研究に参加できます。まず、どのテーマにするか相談しましょう。なお、希望者は皮膚科関連学会への参加・発表が可能です。参考までに2019年度の課題は以下の通り。
(1)ヒトiPS細胞由来メラノサイトを使用した美白化粧品成分を評価した英語論文の作成とその学会発表への参加(岡山で行われた日本色素細胞学会に共同演者として参加)
(2)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症での国際臨床研究(MIRRA試験)・ヒトiPS細胞由来メラノサイトに関する英語学会発表
3年次後期 / 必修 / 5単位
皮膚科が関与するすべての疾患に対する幅広い理解を目標とする。皮膚科学習の面白さと難しさを実感しながら、医師として必要な皮膚疾患の診断法、病態、治療法を学習する。
実際の臨床実習への橋渡しとして、まず疾患に対する基礎的事項を講義します。皮膚病は、難しい漢字や難解な用語が多いです。そこで授業では分かりやすさをモットーに、丁寧に説明していきます。
初日に皮膚科全授業で使用する資料を配布します。さり気なくオリジナルの語呂合わせも混ぜました。配布資料は、BSL実習中も常時、持参し確認します。当然、医師国家試験で必要な知識も盛り込んでいますが試験だけでなく、医師になってからも参考にできるよう作成したので、ぜひ活用してください。
皮膚科的な発想や醍醐味を味わっていただき、授業終了時には皮膚科が身近になっていることを切に期待しています。
4年次 / 必修 / 5単位
発疹という皮膚症状を切り口として、症候への理解を深める。達成されれば、CBTや医師国家試験の症例問題への対応となる。
医師国家試験の皮膚科領域に準じたオリジナルの設問を用意しました。3年時の「皮膚科学」で教えた内容となりますが、常に医師国家試験を意識して授業をしてきましたので、その範囲内です。
発表会の登壇者は、発表者とPowerPoint進行役の2人です。「正解に至る過程と理由をプレゼンする」「工夫などは各人に任せる」としました。プレゼン後は質疑応答です。その後、症候病態(皮膚科)をPowerPointで講義します。
4年次 / 必修 / 5単位
3年時の「皮膚科学」で教えた知識を活用する・学生同士で共同して勉強する・その結果を教師がフィードバックすること。
チューターには事前にガイドを配布し、演習を誘導します。しかし主体はあくまでも学生です。
医師国家試験は、医学部生にとって最大公約数の目標だと認識しています。そのため3年次に、過去の医師国家試験を網羅した内容の(当然、実臨床にも直結し役立つ)オリジナルのプリントを配布しています。3年次以降は復習となり、本講義もその一環となります。
4年次後期 / 必修 / BSL臨床実習
皮膚科は目で見、手で触れて診断する学問である。目で見える臓器ともいえる皮膚の病気に接することで、皮膚病への理解を深めることを目標とする。
大学病院(外来見学、病棟での回診、手術見学、研究見学など)や、開業された先生方への訪問を経験し、皮膚科のあらゆる分野に接する。
全員が経験する実習として、大学病院(外来見学、病棟での回診、手術見学、研究見学)、開業された先生方を訪問しての見学があります。さらに皮膚科を選択した学生は、病棟で入院患者を担当し、皮膚科診療のすべてを可能な範囲で体得できます。
皮膚は現在、一番注目されている臓器といえます。アトピー性皮膚炎は皮膚の最も外側にある角層が破綻するために起こることが分かってきました。さらに食物アレルギーの発症にも深く関与しています。アトピー性皮膚炎・乾癬・蕁麻疹では、新規に開発された生物学的製剤が投与されています。膠原病や血管炎では、最初期の症状が皮膚に現れますし、皮膚癌は増加の一途をたどっています。他にも天疱瘡、類天疱瘡、膠原病、蜂巣炎、帯状疱疹、ベーチェット病、痤瘡(にきび)、白癬(水虫)、脱毛症など、多彩な皮膚疾患の患者さんに接することで、将来への基礎を構築しましょう。
将来どのような診療科へ進んでも皮膚は目で見えるため、皮膚疾患に関して患者さんから相談を受けることがよくあります。しっかりと学びましょう。