医学部 研究室案内
Faculty of Medicine
Faculty of Medicine
石井 智徳 教授
亀岡 淳一 教授
STAFF
石井 智徳 教授 | |
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亀岡 淳一 特任教授 | |
小寺 隆雄 准教授 | |
高澤 德彦 准教授 | |
城田 祐子 准教授 | |
阿部 正理 講師 | |
沖津 庸子 講師 | |
岡 友美子 講師 | |
小林 匡洋 講師 | |
市川 聡 講師 | |
熊谷 輝 助手 |
❶高齢リウマチ患者に適した治療アルゴリズムの開発
❷多発性筋炎・皮膚筋炎の疫学研究
❸肺動脈性肺高血圧症の発症に関わる遺伝子の研究
❹血液細胞での鉄依存性の細胞死に関連する遺伝子発現の検討
❺血液外来新患患者の各種血液疾患と検査値に関する後方視的研究(東北大学との共同研究)
❻カルテピアレビュー法による教育アウトカム評価
❼アカデミックな質問力向上のための教育法の開発
(1)関節リウマチの治療の進歩は著しく、患者の約半数が寛解へ至り、残りの大多数も低疾患活動性となり、関節変形を残すことはほとんどなくなっています。しかし一部の患者では合併症や副作用のため、十分な薬物治療ができず、現代治療の恩恵を受けられないことがあります。ガイドライン等にも合併症や高齢者などに対しての治療方法についての記述は全くないのが現状で、各専門医が試行錯誤の上で治療方針を決定しています。
この場合の問題点は、メソトレキサートによる骨髄抑制、間質性肺炎、リンパ増殖性疾患が主に高齢者で起きることと、ステロイド使用による骨粗鬆症の影響が高齢者で大きく、ADL低下の原因になることです。この2つを回避した治療の有用性の検討を行っています。
(2)多発性筋炎・皮膚筋炎とは、筋組織や皮膚組織に対する自己免疫性の炎症性疾患のことで、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下を来たします。免疫抑制療法に反応性良好なサブタイプがある一方で、急速進行性間質性肺炎の合併により、予後不良のサブタイプもあり、早期診断・治療が重要です。発症の病因として、HLAなどの遺伝的要因と環境的要因があり、環境要因に関してはウイルス感染、紫外線、薬剤の影響などがあります。
近年、筋炎の全体の罹患者数は増加傾向にあり、いくつかのサブタイプは、地域による発症や、季節性があることが報告されています。多発性筋炎・皮膚筋炎の、発症に関わるウイルス感染などの環境的要因と、発症する地域性、季節性を探究し、病態やリスク因子を明らかにするために、疫学研究を行っています。
(3)肺動脈肺高血圧症(PAH)は、特発性、遺伝性、膠原病関連PAH (CTD-PAH)などがありますが、肺血管拡張薬・免疫抑制療法の進歩にも関わらず、 いまだ生命予後不良な疾患であり、病態解明が必要です。
転写因子GATA-2は単球マクロファージ系の分化に根本的な役割を持ち、さらに肺血管収縮に重要なエンドセリン発現も制御します。GATA-2変異を原因とするMonoMac症候群では、末梢血の単球減少や肺胞マクロファージの著しい減少と機能障害を認め、肺胞蛋白症やPAHを呈することが知られています。
そのためPAH病態解明に向けて、GATA-2の病態への関与を探究しています。GATA-2 ノックアウトマウスを用いて、低酸素状態でPAHを誘発し、血管のリモデリングや、浸潤する炎症細胞について、詳細を検討しています。
(4)血液疾患において、骨髄不全症や白血病ではいまだに治療抵抗例が問題で、これらの多くは貧血に対する輸血等のため、鉄過剰状態です。近年、主に非血液腫瘍細胞の研究から、鉄依存性の細胞死であるフェロトーシスが提唱されました。しかしながら、赤血球分化や血液腫瘍におけるフェロトーシス制御のメカニズムは未解明です。
鉄はヘムの形で転写因子への結合を介して遺伝子発現を調節することが知られています。赤血球分化は、鉄が多い状況にさらされながら成熟する過程であることから、生体で最もフェロトーシスを制御する仕組みを持つ可能性があります。
本研究は赤血球分化細胞株で鉄過剰条件とし、血球分化に重要な転写因子がフェロトーシスに関連する遺伝子をどのように制御するか明らかにします。この成果によって、フェロトーシス機序を介した骨髄不全症や白血病の新たな標的治療に結び付けることができます。
(5)我々は2002年4月より、共同研究施設である東北大学血液免疫科の血液外来新患患者全例のデータベース(DB)を作成しています。このDBをもとに、2002年から2015年までの血液疾患患者(7384名)のうち大球性貧血628例を解析し、1)骨髄不全症候群が最も頻度が高いこと、2)骨髄系以外の腫瘍(リンパ系、固形癌)もしばしば大球性貧血を呈すること、3)MCVのカットオフ値114と130で原因疾患を3群に明瞭に分類できること等を報告しました(Int J Hematol 104:344-57, 2016)。
このDBを利用して、さらに「再生不良性貧血と骨髄異形成症候群の鑑別における末梢血WT1mRNA の有用性」「血清可溶性インターロイキン-2受容体が著明高値を示す非リンパ腫疾患」「真性多血症と二次性多血症の鑑別における血清エリスロポエチン値の意義」「好酸球増多症の原因疾患と鑑別」「APTT単独延長の原因疾患と鑑別」等を、東北医科薬科大学病院のデータも交えて、検討しています。
(6)教育の評価にはインプット評価(どのような教育が施されているか)、アウトプット評価(終了時にどのような能力が獲得されたか)、アウトカム評価(長期的にどのような人材を生み出したか)の3種類があります。
日本の医学教育においてインプット評価・アウトプット評価は実施されていますが、アウトカム評価(卒後にどのような診療を行っているか)はほとんどなされていません。そこで我々は、2010年より、長期アウトカム評価のツールとしてのカルテピアレビューシステムの開発に取り組み、信頼性(Tohoku J Exp Med 233:189-95, 2014)および基準関連妥当性(Tohoku J Exp Med 248:253-260, 2019)を確立してきました。現在、「初期研修を大学病院で行った場合と市中病院で行った場合で診療に違いはあるか」など、実際のアウトカム評価に取り組んでいます。
(7)学会等の議論の場で日本人の質問が少ないことはしばしば指摘されていますが、質問力の体系的な教育は国内外を通してほとんど試みられていません。そこで我々は、質問力育成のために、「質問評価表の開発」「学内授業での教育」「学会での教育」の3段階による教育手法の開発を計画しました。
まず、「重要性」「独自性(意外性)」「レトリック」「ミクロかマクロか」「benefitの及ぶ範囲(『質問者にとどまる』『聴衆に及ぶ』『発表者にまで及ぶ』の3段階評価)」の5項目による質問評価表の信頼性を3つの学会で検討し、十分な信頼性(級内相関係数の平均測定値は、それぞれ、0.795, 0.627, 0.625, 0.874, 0.779)を得ました。この評価表を用いて、学内授業での教育および学会会場での教育に取り組んでいます。
3年次前期 / 必修 / 1単位
英語で書かれた教科書・論文を読み、英語で論文(主にabstract)を書く力を身に付ける。
本授業でwriting 力を重視している理由が3つあります。第一に、writing 力の土台があれば、必要に応じてspeaking 力も伸ばすことができます。第二に、将来どのような職場で働いていても、医師であれば、珍しい疾患や病態の患者さんに遭遇して、症例報告を書く機会は必ずあります(本学の卒業生には、是非、英語でケースレポートを書いてほしいと願っております)。第三に(これが最も重要なのですが)、英語の論文を書くためのtechnical writing は、日本語による論文・レポート等の執筆も含めて、あらゆる知的創作活動を行っていくための共通の型であるからです。
3年次後期 / 必修 / 1単位
英語で医療面接を行い、英語で簡単な発表や質疑応答を行う力を身に付ける。
全国ではもとより、宮城県内でも英語しか話せない患者さんが着実に増えています。そのような患者さんが受診した際にある程度対応できる英語力は、今や日本の医師にとって必須のスキルといえます。
本授業ではこれまで主に疾患ごとに学んできた臨床医学を、症候ごとに整理し直す機会をつくります。また、新たな知を創出する上で欠かせない質疑応答力を、英語を通して体得してもらいたいと思っています。
3年次後期 / 必修 / 1単位
免疫・アレルギー疾患の病態生理を理解し、症候、診断と治療を学ぶ。
リウマチ性疾患は難しいものとして敬遠されがちですが、「免疫は難しい」との先入観があるのではないでしょうか。リウマチ膠原病を理解するために基礎免疫学を完璧に理解する必要はありませんので、気軽に学びましょう。
またリウマチ性疾患は珍しいもとの思われがちですが、関節リウマチで有病率が0.6~1%、その他の自己免疫性疾患を合わせれば、もっと多くの人が罹患するありふれた病気です。さらに厚生労働省の調査によると、介護が必要になった人の10.9 %が関節疾患であるそうです。この関節疾患のうち、かなりの割合が関節リウマチであると想像されます。あまり身構えずに、common disease として考えてみましょう。
3年次後期 / 必修 / 2単位
血液・造血器・リンパ系の構造と機能を理解し、主な疾患の病因、病態生理、症候、診断と治療を学ぶ。
血液学の過去20~30年間の進歩はすさまじく、その進歩は今後もさらに続くことが予想されます。医学の知識は時間的にstaticではなく、dynamicであることを意識しながら学んでください。
また、講義形式に加えて、active learning 形式(PBL tutorial, TBL)も取り入れておりますので、主体的・積極的な授業参加を期待します。
近年、認知心理学の進歩により、理解力向上においてspacing effect(2度目の学習は一定の間隔を置くと、より効果があること)が示されています。講義直後の復習(30分以上)に加えて、一定期間後(各自計画)にも復習(30分以上)をしてください。
4年次前期 / 必修 / 3単位
臨床推論・臨床判断に必要な思考力を養成するために、主な症候・病態の原因、分類、診断と治療の概要を、発達、成長、加齢ならびに性別と関連付けて体系的に学ぶ。
1. 予習として、必ず、症候の鑑別疾患を列挙しておくこと!
2. 復習として、必ず、症候の鑑別疾患と臨床推論の流れを確認しておくこと!
4年次前期 / 必修 / 19単位
臨床推論・臨床判断に必要な思考力を養成するために、患者情報(症候、身体所見、検査所見)から的確な診断および治療計画の策定に至る思考過程を学ぶ。
予習:授業で学習するシナリオの症候について、鑑別すべき疾患を列挙しておくこと!
復習:一つの症例シナリオごとに、学習が終了後に、臨床推論および臨床判断の過程を振り返り確認すること!
4年次前期 / 選択必修 / 1単位
4年次前期―5年次後期 / 必修 / 64単位
全診療科共通の学修目標(コミュニケーション、チーム医療等)に加えて、血液・リウマチ科にspecificな知識・技能と、医師になってから必ず必要となるgeneralな発信力を身に付ける。
すべての医師に必要となる学術的な技能の一つに、珍しい疾患や病態の患者さんに遭遇した際の「症例報告」を作成する能力があります。その「型」を、レポート作成を通して学びます。
当科のレポート症例を学会で発表し、最優秀演題賞を受賞した学生もいます。
https://www.facebook.com/tohoku.mpu/photos/a.202413417156163/593693694694798/?type=3
医学英語Ⅴのメッセージでも述べたように、本学の卒業生には将来、日々の臨床で得られた発見を「症例報告」として発信してほしいと願っています。