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【プレスリリース】原発性副腎不全をきたしたリンパ腫様肉芽腫症を報告 ―日本で初めて、世界でも数件しか報告されていない希少な病態―

概要

 千葉大学大学院医学研究院の佐久間一基特任准教授、大学院医学研究院/災害治療学研究所の田中知明教授、東北医科薬科大学の中村保宏教授らは、原発性副腎不全 をきたしたリンパ腫様肉芽腫症を報告しました。原発性副腎不全はアジソン病とも呼ばれる疾患です。病因は、感染症(結核、真菌性、後天性免疫不全症候群)、自己免疫性、癌の副腎転移などがありますが、今回、原発性副腎不全をきたす珍しい病態として、リンパ腫様肉芽腫症があることを明らかにしました。本知見は、今後、原発性副腎不全の原因疾患の適切な診断に寄与することが期待されます。本報告は、世界で評価の高い医学雑誌の一つである英国科学誌The Lancetに、2024年 6月 1日に掲載されました。

研究内容

 本報告では、多発性の肺病変、両側の副腎腫大を呈した原発性副腎不全患者の原因疾患として、リンパ腫様肉芽腫症を同定しました。リンパ腫様肉芽腫症は、Bリンパ球と呼ばれる白血球が過剰に産生される病気です。リンパ腫様肉芽腫症の患者は通常、肺、中枢神経系、皮膚、腎臓に病変が認められることが多く、副腎病変は比較的稀で、これまで副腎機能への影響は十分に検討されていませんでした。本報告では、画像所見で多発肺病変、両側副腎腫大を認め、FDG-PET注1)で強い取り込みがあり、副腎の病理所見から、リンパ腫様肉芽腫症と診断しました。内分泌機能検査で、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールが極めて低い値に対して、代償的に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が極めて高い値を示し、ACTHを負荷しても、コルチゾールが上昇しないことから原発性副腎不全をきたしたことを同定しました(図1)。

図1:多発肺病変、両側副腎腫大をきたしたリンパ腫様肉芽腫症

(用語解説)

注1)FDG-PETブドウ糖の類似物質であるフルオロデオキシグルコース(FDG)に放射性同位元素(F-18)をラベルした薬剤(18F-FDG)を体内に投与し、陽電子放出断層撮影(PET)により、18F-FDGの体内での分布を画像化します。がんや炎症の場所の特定に利用されます。

論文名

タイトル:Primary adrenal insufficiency due to lymphomatoid granulomatosis in a 32-year-old man

掲載誌:The Lancet

DOI:10.1016/S0140-6736(24)00974-7

ウェブサイト:https://www.thelancet.com/article/S0140-6736(24)00974-7/abstract?

著者名

Ikki Sakuma, Ryoichi Ishibashi, Kosei Matsue, Daniel F Vatner, Yasuhiro Nakamura, Koutaro Yokote, & Tomoaki Tanaka

研究の詳細・お問い合わせ先

プレスリリース本文

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医学部 病理学教室(中村 保宏 教授)