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●EBウイルスはほとんどの健常人に無症候性に感染しているウイルス
●日本を含む東アジア地域のEBウイルス地域株には大きく二つのグループがあることを発見
●東アジア地域におけるEBウイルス地域株の分布は人類移動の歴史を反映していることを発見
東北医科薬科大学・医学部・微生物学教室の北村大志助教と神田 輝教授、薬学部・生薬学教室の佐々木健郎教授らの研究グループは、国立感染症研究所、長崎大学、金沢大学との共同研究により、「トランスユーラシア語族」という同じ言語族に属する人々は、同じタイプの「EBウイルス」に感染していることを初めて明らかにしました。
「トランスユーラシア語族」とは、日本語、韓国語、ツングース語、モンゴル語、チュルク語などユーラシア大陸の東西に広がる言語族です。東アジア各地由来のEBウイルスのウイルスゲノム塩基配列を比較した結果、トランスユーラシア語族とその語族の発祥の地とされる中国北東部由来のEBウイルス株は類似性を認めること、中国南部由来ウイルス株とは特定のウイルス遺伝子の塩基配列が異なることを明らかにしました。本研究結果は、分子疫学により各地のEBウイルスのウイルスゲノム塩基配列を比較することで、東アジアにおける人類移動の歴史を推定できるという初めての報告です。
本研究成果は国際専門誌Virology(ヴィロロジー)の2025年2月号に掲載されました。またインターネット(下記URL)で無料公開されています。
(https://doi.org/10.1016/j.virol.2024.110359)。
なお、本研究は日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究(C)の支援を受けて行われたものです。
【用語解説】
EBウイルス(Epstein-Barrウイルス)
ヒトに感染するヘルペスウイルスの一種で、唾液を介して主に親から子に感染する。世界中に蔓延しており、成人になるまでに約95%の人が感染する。EBウイルスに感染しても、通常は無症状または一時的に軽度な症状を示すだけであるが、思春期の初感染では伝染性単核症という病気を発症することがある。またリンパ腫や上咽頭がんなどの悪性腫瘍や、慢性活動性EBウイルス感染症、多発性硬化症などの難病の原因にもなるウイルスである。
トランスユーラシア語
日本語、韓国語、ツングース語、モンゴル語、チュルク語などユーラシア大陸に広がる言語群を指す。
タイトル:Distinct genomic features of Transeurasian strains of Epstein-Barr virus in East Asia
(日本語名)ヴィロロジー
掲載紙:Virology
DOI:10.1016/j.virol.2024.110359
Hiroshi Kitamura, Iwao Kukimoto, Misako Yajima, Kazufumi Ikuta, Kenroh Sasaki, Teru Kanda* (*責任著者)
微生物学教室 教授 神田 輝