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・新型のコロナウイルスとインフルエンザAウイルスは動物間を移動してヒトに移行した場合にパンデミックを起こすリスクが高い病原体です。
・これらはウイルスの種類が異なりますが、同様な作用点で効果を示す低分子RNA分子を発見しました。
・生体成分であるRNAの配列の中からグアニン4重鎖(G4構造)という安定な構造をとる12塩基長のRNAが、ウイルスのゲノムRNAとウイルスのタンパク質との結合を阻害して、感染性ウイルスの増殖を数千から数百分の一倍に阻害することを見出しました。
・本発見のG4構造低分子RNAがパンデミックに備えたくすりとして実用化されれば、新型ウイルスによる人の生命・社会経済活動への影響を軽減することが期待されます。
東北医科薬科大学の久下周佐(くげ しゅうすけ)特任教授と関根僚也(せきね りょうや)博士課程大学院生(令和5年修了)は、ヒトコロナウイルスとインフルエンザAウイルスのゲノムRNA上に存在しないグアニンが12個並んだRNA配列(G12)に、強い抗ウイルス活性があることを見出しました。安定化修飾を加えたRNA(G12S)は、細胞の中でウイルスゲノムRNAとそれを包むヌクレオタンパク質との結合を阻害します。コロナウイルスの場合は感染性のウイルス産生を阻害し、インフルエンザAウイルスの場合は細胞外への放出を阻害することを見出しました。本研究成果は令和7年1月15日(19:00)付け(ロンドン時間:2025年1月15日、10:00)でNature関連国際誌Communications Biologyのオンライン版に掲載されました。本研究はJSPS科研費(18K06630, 22K06616)の助成を受けて行われました。
【用語説明】
G4構造:核酸のグアニンに富むRNA(DNA)配列は4つのグアニン間の水素結合から平面構造をとります。その平面構造が2枚以上存在するとG4構造と呼ばれる4重鎖のRNA(DNA)が形成されます。
コロナウイルス:重症急性呼吸器症候群(2002~2003)、中東呼吸器症候群(2012~現在)、COVID19(2019年から現在)と十年に一度の頻度で新たな重症肺炎を起こすウイルスが発生してきました。かぜの原因となるコロナウイルスも4種類存在します。多くの場合は自然界のコウモリから中間動物(宿主)を経てヒトの世界に広がると考えられています。
新型インフルエンザAウイルス:スペインかぜ(1918~1957)、アジアかぜ(1957~1968)、ホンコンかぜ(1968~現在)、ソ連かぜ(1977~現在)、パンデミックインフルエンザ(H1N1)(2009~現在)と歴史的に出現と世界への感染拡大を繰り返している。現在、鳥インフルエンザ(H5N1)の鳥間およびヒトを含む哺乳動物への広がりが懸念されています。
タイトル:G-quadruplex-forming small RNA inhibits coronavirus and influenza A virus replication
(日本語名)G4構造を形成する短鎖RNAは複数種のコロナウイルス及びインフルエンザAウイルスの複製を阻害する
掲載誌:Communications Biology, January 15, 2025
DOI:10.1038/s42003-024-07351-7
Ryoya Sekine, Kouki Takeda, Tsukasa Suenaga, Satsuki Tsuno, Takumi Kaiya, Maki Kiso, Seiya Yamayoshi, Yoshihide Takaku, Shiho Ohno, Yoshiki Yamaguchi, Seiichi Nishizawa, Kazuhiro Sumitomo, Kazufumi Ikuta, Teru Kanda, Yoshihiro Kawaoka, Hidekazu Nishimura, and Shusuke Kuge
薬学部 微生物学教室 特任教授 久下 周佐