薬学部 研究室案内

Faculty of Pharmaceutical Sciences

生命科学系

機能病態分子学DIVISION OF GLYCO PATHOLOGY

STAFF

顧 建国 教授(兼任)

業績

稲森 啓一郎 准教授

業績

狩野 裕考 助教

業績

研究テーマ

スフィンゴ糖脂質の病態生理的意義の解明

研究概要

[生活習慣病や慢性炎症性疾患におけるスフィンゴ糖脂質の病態生理的意義]
シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質であるガングリオシドは、糖鎖構造とセラミド構造の多様性に基づき、少なくとも1000種を超える分子が存在しています。これら多様なガングリオシド分子種の発現は、細胞や組織・器官に選択的かつ特異的に制御されており、この発現制御機構をどのように獲得したのか、その多様性の生物学的意義は未解明であり、基本的な研究課題です。
健常人血清中には、約15 µg/mlのガングリオシドが存在し、その90%以上がGM3です(図1)。私たちは、LC-MS/MS解析により、血清中のGM3には、セラミド構造の多様性に基づいて23の分子種が存在すること、メタボリックシンドローム患者では、極長鎖飽和アシル鎖およびα位の水酸化修飾を持つセラミド構造を有するGM3分子種(C22:0, C24:0, hC24:0)が増加し、一方、長鎖(C16:0, C18:0)のアシル鎖を有するGM3分子種は減少することを見いだしました。
このGM3分子種多様性の病態生理学的意義とは、一体何なのでしょうか。私たちは最近、マクロファージに発現している自然免疫受容体のTLR4に対する新規リガンドとしてGM3分子種が機能していることを発見し、「ガングリオシド分子種による慢性炎症増悪ループ」の臨床レベルでの証明に向けて、本学医学部との共同研究を推進しています。
また、GM3合成酵素は、ヒトでの欠損症が見いだされています。私たちは、マウスのGM3合成酵素ノックアウトマウスを用いて、さまざまな病態への関与を見いだしつつあります。スフィンゴ糖脂質は組織・細胞で発現が異なり、いわば個性ある細胞の顔として、特異的な合成酵素によって段階的に生合成されます。私たちは、これらの酵素の遺伝子およびタンパクレベルでの発現制御機構を細胞レベルで研究し、さらに病態における合成酵素の役割を追求しています。


図1GM3分子種の違いによるTLR4の活性化と抑制

主な担当科目

人体生化学

薬学科3年次前期 / 必修 / 1単位

ねらい

サイトカイン、増殖因子、ケモカイン、オータコイドの生理作用を、細胞内情報伝達の観点から理解する。また、糖代謝異常に基づく生活習慣病発症について理解することを目的とする。

Message

1・2年次の生化学I, II, III, IVで学んできた基礎知識をもとに、飽食や飢餓状態、炎症状態などにおける人体の生化学反応がどのようにダイナミックに変化するのかを、統合的に理解していきます。これは、薬剤師として患者さんに薬の薬効を説明できるようになるための必須知識です。
人体生化学の講義の最初に、この授業の重要学習課題(約35課題)を提示しますので、この課題に沿って事前に教科書の該当する部分を読み、理解できたところと疑問点を整理し、ノートを作成します。また、練習問題をプリントに掲載しているので、理解を深めてください。

細胞と医療

薬学科4年次後期 / 必修 / 1単位

ねらい

組換え体医薬品、遺伝子治療、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた移植治療等の特性を理解し、それらに関する基本的な知識を修得することを目的とする。

Message

この科目では、今後も著しい発展と医療への応用が進むと考えられるバイオ医薬品や再生医療などについて学習していきます。これまで皆さんが生化学および人体生化学の各講義で学んできた内容を基礎としますので、十分に復習しておいてください。また、事前に配布されるプリントと教科書を使って予習をしておいてください。