生涯教育講演会・研修会

LECTURES

第30回 東北医科薬科大学生涯教育講演会

平成28年度生涯教育プログラムの一環として、「第30回東北医科薬科大学生涯教育講演会」を開催いたしました。

日時: 平成28年10月29日(土) 14:00~17:15
会場: 東北医科薬科大学講義棟 70周年記念講堂
主催: 東北医科薬科大学
共催: 東北医科薬科大学同窓会、日本薬剤師研修センター、宮城県薬剤師会、宮城県病院薬剤師会、仙台市薬剤師会
後援: 東北医科薬科大学同窓会宮城支部

講演1

「質量分析を利用した疾患バイオマーカーの探索」
東北医科薬科大学薬学部 臨床分析化学教室 教授 藤村 務

講演2

「医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために(13)」
2-1
「糖尿病内服療法 Up to Date ―新しい薬、昔からの薬、納得の使い分けー」
東北医科薬科大学医学部 内科学第二(糖尿病代謝内科)教室 病院教授 赤井 裕輝

2-2
「糖尿病および合併症の薬物治療と処方解析」
東北医科薬科大学医学部 内科学第二(糖尿病代謝内科)教室 病院教授 赤井 裕輝
東北医科薬科大学薬学部 臨床薬剤学教室 講師・東北医科薬科大学病院薬剤部 薄井 健介

  • 参加費 無料
  • 参加資格 特になし
  • 認定制度
    日薬剤師研修センター認定: 2単位
    日病薬病院薬学認定薬剤師制度(研修番号II-6:0.5単位,V-2:0.5単位,III-1:0.5単位)
    宮城県病院薬剤師会生涯研修認定:1.5単位

講演会要旨

講演1 要旨

「質量分析を利用した疾患バイオマーカーの探索」

東北医科薬科大学 薬学部 臨床分析化学教室 教授 藤村 務

ゲノムDNAからの転写産物の総和としてTranscriptome、存在するタンパク質の総和としてProteome、代謝産物の総和としてMetabolomeという概念がある。特に私は、生体の表現型(体の状態など)に近いProteome及びMetabolomeを主体とした研究を行ってきました。ヒトが病気に罹った場合、身体は病気を反映して血液中や尿中に様々な物質を量的に変化させる。この物質を疾患バイオマーカーと呼びこれらを測定することにより病気の予防や早期発見・診断および治療予後の経過観察に役立てることができる。今回、質量分析装置を用いてこれらを測定し、疾患バイオマーカーの探索を行った例を二つ紹介する。

疾患バイオマーカーの探索:オームサイエンスにおけるオミクス解析

例1:血清PSA値を補完する前立腺がんマーカーの探索
現在、前立腺がんの診断には組織特異性の高いマーカーとして血清prostate-specific antigen(PSA)値が用いられている。しかしながら、グレーゾーンといわれる4-10 ng/mlの範囲内に限って、がん患者の約30%、前立腺肥大症などの良性疾患患者の約70%が混在してしまう。従ってがんの確定診断は患者への負担が大きい生検に依存しているのが現状である。この問題を克服し血清PSA値を補完する前立腺がんマーカーの探索を行った。
例2:呼気中のがんマーカーの探索
初期の食道がんは自覚症状がほとんどなく、リンパ節転移が多く比較的周囲に浸潤しやすいことから進行が早く発見が遅れやすい。臨床医は現場で進行食道がんの呼気に特有のにおいを感じるという。呼気中には様々な揮発性有機化合物(VOCs)が存在し、疾患によって発生する臭気の原因となると考えられる。本研究では食道扁平上皮がん患者の呼気をGC/MSを用いて測定し、食道がん特有の臭気の原因となる物質を同定し、食道がんの早期発見のための疾患バイオマーカーを探索した。

講演2-1 要旨

医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために(13)
「糖尿病内服療法 Up to Date -新しい薬、昔からの薬、納得の使い分け-」

東北医科薬科大学医学部 内科学第二(糖尿病代謝内科)教室 病院教授 赤井 裕輝

現在使用される糖尿病の内服薬は7種類のカテゴリーに分けられる。スルフォニル尿素薬、グリニド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の7種である。
比較的新しいDPP4阻害薬とまさに新薬のSGLT2阻害薬は、まだ臨床現場での使用経験の蓄積が乏しい。とくにSGLT2阻害薬は少しずつ安全な使用法や治療効果が明らかになってきている段階であるが、臨床現場の期待度が大きく使用も増加している。DPP4阻害薬は先発のシタグリプチンが使用後7年になり、血糖降下、HbA1cの改善はこれまでの薬にない顕著な効果が認められており、本邦では第1選択薬として処方する医師が増えている。この傾向は好ましいことであるのかどうか、改めてこれら新薬の薬理学的な作用機序を確認し、適切な使用について検討を加えたい。一方、古いタイプの5種類の糖尿病薬は、その基礎的・臨床的情報が年々蓄積されてきており、安全な使用法についてもほぼ確立していると見てよいので信頼性は高まっているのであるが、爆発的な新薬の延びに押され使用頻度は低下している。
2型糖尿病の治療を考えるうえで最も重要な点は、膵島β細胞がアポトーシス等により減少し、インスリン分泌能が年々低下していくことである。これを考慮しない限り各薬剤の効果は予想できない。患者の膵島機能を薬剤選択の基本として検討すれば、患者ごとによく効く薬をテーラーメードで選択できる。
薬剤の作用機序とインスリン分泌能など患者個々の体質を考えての薬の使い分けを紹介したい。
糖尿病の治療の基本は何といっても食事療法にある。効果的な薬を選択しても、何剤併用しても、インスリン治療を導入しても効果の見られないことはしばしばであるが、そこには必ずといってよいほど食事療法の大問題が潜んでいる。外来での食事療法の問題点への見当の付け方、そして効果的な指導法についても紹介させて頂く予定である。

講演2-2 要旨

医師の処方を理解し、適切な服薬指導をするために(13)
「糖尿病および合併症の薬物治療と処方解析」

東北医科薬科大学医学部 内科学第二(糖尿病代謝内科)教室 病院教授 赤井 裕輝
東北医科薬科大学薬学部 臨床薬剤学教室 講師・東北医科薬科大学病院薬剤部 薄井 健介

<症例1>

TY 36歳 女性
身長:170cm  体重:117kg  BMI:40.5kg/m2
本日の検査値 HbA1c:7.6%  血糖値:115mg/dL

Rp 1) グルファスト錠10mg 1回1錠
   1日3回 毎食直前
Rp 2) ベイスンOD錠0.3mg 1回1錠
   1日3回 毎食直前
Rp 3) メトグルコ錠250mg 1回2錠
   1日3回 毎食後
Rp 4) オルメテックOD錠20mg 1回1錠
   1日1回 朝食後

<症例2>

SM 36歳 女性
身長:156cm  体重:56kg  BMI:23.0kg/m2
4ヶ月前から中止されていたベイスンが本日より再開
本日の検査値 HbA1c:6.9%  血糖値:95mg/dL

Rp 1) ベイスンOD錠0.2mg 1回1錠
   メトグルコ錠500mg 1回1錠
   1日3回 毎食直前
Rp 2) ミカルディス錠40mg 1回1錠
   アテレック錠10mg 1回1錠
   1日2回 朝・夕食後
Rp 3) メバロチン錠5mg 1回1錠
   1日1回 夕食後
Rp 4) ユリノーム錠25mg 1回0.5錠
   1日1回 夕食後