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● 細胞膜脂質スフィンゴミエリン(SM)の脂肪酸鎖長の違いが自然免疫の働きを制御することを発見
● 短鎖型 SM C12(ラウロイル型)はマクロファージで炎症性サイトカイン放出とパイロトーシス(炎症性細胞死)を誘導し、長鎖型(C16–C24)のスフィンゴミエリンは逆に炎症を抑制する性質を示すことも判明
● SM C12 は ヒトカスパーゼ-4に直接結合する新規リガンドであり、感染症・自己免疫疾患・敗血症などの新たな治療標的となる可能性に期待
大阪大学放射線科学基盤機構の黄栩昊(コウ シュウホ)特任助教(常勤)(研究当時 大学院理学研究科博士後期課程)、大阪大学放射線科学基盤機構の樺山一哉教授、深瀬浩一特任教授らの研究グループは、慶應義塾大学の狩野裕考特任助教、鳥取大学の花島慎弥教授、東北医科薬科大学の稲森啓一郎教授、新田昂大助教らとの共同で、スフィンゴミエリン(SM)の脂肪酸鎖長の違いが自然免疫のスイッチをオン・オフする鍵となることを世界で初めて明らかにしました。
特に短鎖型「SM C12」は、マクロファージに強い炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-6 など)を誘導し、細胞膜上に水を取り込む穴を形成するタンパク質であるガスダーミンDに依存的なパイロトーシス(細胞の膨化と破裂を伴う炎症性細胞死)を引き起こすことがわかりました。さらに、SM C12はヒトのカスパーゼ-4(マウスではカスパーゼ-11)に直接結合し、細胞内の炎症センサーを作動させる新規リガンドであることも実証しました。
これらの成果は、自然免疫の理解を大きく前進させるだけでなく、過剰炎症を制御する治療の開発につながる可能性があります。
本研究成果は、米国科学誌Cell Reportsに2025年11月19日(日本時間)にオンライン掲載されました。

Modulation function of sphingomyelin molecular species in TLR4 signaling and cell death
掲載紙:米国科学誌「Cell Reports」(オンライン)
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2025.116568
黄栩昊1,2, 狩野裕考4,5, 上野純平1, 石川潮4,5, 新田昂大5, 髙松正之1,2, 下山敦史1,2,3,
谷口真6, 花島慎弥7, 稲森啓一郎5 井ノ口仁一3,5, 深瀬浩一1,2,3, 樺山一哉1,2,3,*(*責任著者)
【所属】
1. 大阪大学 大学院理学研究科 化学専攻
2. 大阪大学 放射線科学基盤機構 附属学際研究センター
3. 大阪大学 大学院理学研究科 附属フォアフロント研究センター
4. 慶應義塾大学 先端生命科学研究所
5. 東北医科薬科大学 分子生体膜研究所
6. 金沢医科大学 総合医学研究所
7. 鳥取大学 大学院工学研究科
薬学部 機能病態分子学教室 教授 稲森 啓一郎