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【プレスリリース】DNA複製における二つのトポイソメラーゼの相補性を証明 -トポイソメラーゼ1と2が同時に機能欠損するとDNA複製が停止し、細胞は死に至る-

発表のポイント

●オーキシンデグロン法という標的タンパク質分解法を用いて、TOP1欠損細胞を作製した。
●TOP1欠損細胞のDNA複製の進行は正常であった。
●TOP1欠損細胞で特異的阻害薬によってTOP2を阻害するとDNA複製が停止し、細胞が24時間で死滅した。

研究概要

 トポイソメラーゼはDNAのねじれを解消することで、DNAを介在するあらゆる反応に関わるタンパク質である。その機能不全は染色体不安定性の原因となるが、トポイソメラーゼを完全に欠損すると細胞が致死となるため、これまで欠損細胞を用いたトポイソメラーゼの解析は十分に行われてこなかった。今回、阿部講師と関教授は、トポイソメラーゼ1の条件欠損細胞を作製し、さらにここにトポイソメラーゼ2の阻害薬を加えることで、細胞内で二つのトポイソメラーゼが同時に機能を失った状態を作り出した。するとこの状態ではDNA複製が停止し、即座に細胞死が誘導されることが明らかになった。この発見は二つのトポイソメラーゼの相補性を示しており、今後トポイソメラーゼの作動薬を利用した抗がん剤の治療などへの応用研究に結びつくことが期待される。
 本研究成果は、Journal of Biological Chemistryに2026年3月4日(日本時間)オンライン掲載されました。

(用語解説)

トポイソメラーゼ
 トポイソメラーゼはDNAに結合し、まずDNAを切断する。その後、DNAを回転させることによりDNAのねじれを解消させ、最後に再結合する。TOP1の場合はDNA二本鎖のうちの片方を、TOP2の場合はDNA二本鎖の両方を切断する。

TOP1作動薬
 トポイソメラーゼ1に作用する薬物としてイリノテカンなどのカンプトテシン誘導体が知られ、多くの文献でこれが「阻害薬」として紹介されている。しかし、単純な阻害薬であればTOP1欠損細胞と似たような効果を持つと予想されるが実態は異なる。カンプトテシン誘導体はTOP1によるDNAの切断を阻害するのではなく、後半のDNAの再結合を阻害するためである。このため、TOP1作動薬はDNAの切断というTOP1欠損細胞よりも重篤な影響を与える。

オーキシンデグロン法
 オーキシンデグロン(Auxin-Inducible Degron, AID)法は、植物ホルモンオーキシン依存のデグロン配列を分解の目印として任意のタンパク質に付加することにより、オーキシン添加時に細胞内で標的タンパク質を迅速に分解除去する技術である。これを用いることでTOP1のような必須遺伝子(なくなったら細胞が致死)の条件欠損細胞を作製することができる。

ニワトリDT40細胞
 ニワトリBリンパ球由来のがん細胞で、高い組換え活性と高い増殖能をもっている。このため遺伝子操作が非常に容易であり、最短1週間程度で遺伝子欠損細胞を作製することができる。

ADC
 がん細胞に特異的に結合する「抗体」と、がん細胞を殺傷する「薬物(ペイロード)」を「リンカー」で結合させた次世代のバイオ医薬品。がん細胞を狙い撃ちにする特性を持ち、高い治療効果と、副作用の低減が期待されている。

論文名

TOP1 and TOP2 complementarily maintain DNA replication fork progression in vertebrates
トポイソメラーゼ1と2は高等真核生物においてDNA複製の進行に相補的に機能する

掲載誌:Journal of Biological Chemistry

DOI: 10.1016/j.jbc.2026.111339.

著者名

Koyuki Umemura, Masato Ooka, Miku Sojo, Masayuki Seki, Menghang Xia, Kouji Hirota, Takuya Abe
梅村小雪、大岡正人、双城美紅、関政幸、Menghang Xia、廣田耕志、阿部拓也

研究の詳細・お問い合わせ先

プレスリリース本文~ 

薬学部 生化学教室ホームページ

https://www.tohoku-mpu.ac.jp/pharmacy/lab/lp_d01/