生涯教育講演会・研修会

LECTURES

第37回 東北医科薬科大学生涯教育講演会

2019年度生涯教育プログラムの一環として、「第37回東北医科薬科大学生涯教育講演会」を開催しました。

日時: 2019年7月6日(土) 午後2:00~5:15
会場: 東北医科薬科大学小松島キャンパス講義棟(仙台市青葉区小松島4-4-1)

メインテーマ:地域医療を考える

講演1

「6年制薬学教育と地域医療への取組み」
東北医科薬科大学薬学部 臨床薬剤学実習センター 教授 小嶋 文良

講演2

「地域医療の現状と薬剤師の新たな役割」
ウエルシア株式会社
岐阜薬科大学 地域医療薬学寄附講座 特任教授 小原 道子

講演3

東北医科薬科大学医学部の取組みと薬剤師への提言」
東北医科薬科大学医学部 地域医療学教室 教授 古川 勝敏

  • 参加費 無料
  • 参加資格 特になし
  • 認定制度
    日本薬剤師研修センター認定1)(2単位)
    日病薬病院薬学認定薬剤師制度2)(研修番号 III-2:2単位)
    宮城県病院薬剤師会生涯研修認定2)(1.5単位)

講演会要旨

講演1 要旨

「6年制薬学教育と地域医療への取組み」

東北医科薬科大学 薬学部 臨床薬剤学実習センター 教授 小嶋 文良

平成27年に改訂された薬学教育モデル・コアカリキュラムの中で、地域医療への取組みに関する項目は、F:薬学臨床であり、その一般目標は「患者・生活者本位の視点に立ち、薬剤師として病院や薬局などの臨床現場で活躍するために、薬物療法の実践と、チーム医療・地域保健医療への参画に必要な基本的事項を修得する。」となっています。東北医科薬科大学薬学部では1年次の薬学入門から始まり、高学年になるにつれて、医療ボランティア実習、セルフメディケーション論、地域医療、実務模擬実習、さらに5年次の実務実習につながります。その中では地域における薬局の役割、実際の活動、地域貢献、地域における他職種との連携などを学び、実務実習で実体験することになります。また、薬学入門における早期体験では、医学部生と合同でスモールグループディスカッションや発表を行っています。4年次に実施する実務模擬実習では、コミュニケーションを含む調剤の実践とシミュレーターによるフィジカルアセスメントを実施しています。これは薬をお渡しした後に、正しく服用(使用)しているのか、効果が発現しているのか、副作用は出ていないのかを確認するために必要な手技になります。さらに体調不良等で薬局に相談に来局された方の状態を把握するためにフィジカルアセスメントを行い、必要に応じて受診勧奨を行いますが、その際正常な状態と異常な状態を見分ける、聞き分ける必要があり、シミュレーターはこのような薬学的推論を行う上でも有用です。また、医療、介護の現場では様々な職種の方々が一緒に活動しており、教育では他の専門職との連携について専門職連携教育(IPE)が必要になってきます。本学では宮城大学と協定を結び模擬事例検討会を実施するとともに、本学附属病院での実習時に看護学生と実際の症例について検討を行うクリニカルIPEについても紹介させていただきます。

講演2 要旨

「地域医療の現状と薬剤師の新たな役割」

ウエルシア株式会社・岐阜薬科大学 地域医療薬学寄附講座 特任教授 小原 道子

日本の高齢化率はいよいよ30%超を目前としており、まだ誰も体験したことがない超高齢社会を迎えつつある。30年後には認知症が1千万人を超えると言われており、現行の介護保険で試算していくと最低でも6兆円超となる。また厚生労働省による年齢階級別死因順位では死亡原因の第3位に老衰が入っている。今後、超高齢社会をいかに健康に過ごすか、いわゆる健康寿命の延伸への理解と実践が求められている。それと同時に今までは「治療」に注力していた医療支援が「予防」「未病」も含めた健康支援全般に広がりつつある。特に最近ではフレイル(虚弱)予防が提案され、低栄養の問題やオーラルフレイル(口腔内環境の低下)なども正しい服薬支援を行うためには薬剤師が向き合うべき重要課題である。ということは、同時に薬剤師も幅の広い職能を活かした取り組みにより、実力を発揮できる千載一遇のチャンスであると考えている。

急性期以外は地域完結型の医療へと変換をしている現在、患者は自分の住み慣れた地域で安心した医療提供が望まれる。今後の在宅医療は、家族も支えつつ、確実に生活の質を重視した医療支援が必要とされるだろう。そもそも在宅医療の目的はQOLの向上である。服薬支援だけでなく栄養や生活機能を始め、生き甲斐を共に考えていくなど非常に多様で、患者に寄り添った提案が必須である。

地域ごとに医療資源や地域資源は異なるが、少なくとも薬剤師が薬の事のみを知る時代は終息した。今後は真の意味で「健康に寿命を延伸していく」ための地域で活躍していく薬剤師の新たな役割を考えてみたい。

講演3 要旨

「北医科薬科大学医学部の取組みと薬剤師への提言」

東北医科薬科大学医学部 地域医療学教室 教授 古川 勝敏

以前より深刻な医師不足が問題であった東北地方に於いて、2011年に起こった東日本大震災は、その医師不足に更なる追い打ちをかけた。その危機的状況を解決すべく、2016年に東北医科薬科大学に医学部が新設された。本学医学部設立のミッションは、(1)地域医療を支える医師の育成、(2)災害医療にも対応できる総合診療医の育成、(3)卒業生の地域定着と医師派遣、(4)薬剤・薬学の基礎知識を持つ医師の育成、(5)被災地域住民に対する健康管理、の5点であり、今後、医学教育、医師育成という面からも、東北の地域医療に貢献していくことは我々東北医科薬科大学の使命である。
一方、社会の高齢化に伴い、身体機能の低下に加えて、複数の慢性疾患を抱える高齢者が激増し、されにこれらに伴う臓器障害が、各個人の病態を一層複雑にし、患者並びに我々医療者を悩ませている。今日、我々に必要とされているのは、疾病を診断、治療する、という観点のみならず、健康を維持・増進する、疾病を予防する、疾病を管理する、身体機能を回復させる、安らかに老いと死を享受する、といった医療も重要になってきている。このような状況下で、地域医療の充実と地域医療を担う「総合診療医」の育成が求められている。地域医療とは、地域の住民の健康のみならず、生活の状態、ライフスタイルにも注意を払い、住民一人一人に寄り添って支援していく医療活動であろう。地域医療に於いては、患者、住民、医療従事者、地元企業、行政等が一体となり、活動を活性化することが不可欠である。その中で総合診療医がコンダクター役として、医療、保健、福祉の連携により地域包括ケアを推進していくことが重要と考える。