ACADEMIC STAFF
INTERVIEW
Kaku Mitsuo
賀来 満夫 特任教授 Kaku Mitsuo
医学部 感染症学教室
患者さんへの思いを念頭に、
すべての人を幸せにできる
医療人を目指してほしい。
新型コロナウイルス感染症が世界に広がる中、
感染症分野の第一人者として、さまざまなメディアで
情報発信を続ける賀来教授に、コロナ禍の過ごし方や本学の特徴、
ご自身のこれまでの歩みなどについて話を伺いました。
Q1
特任教授が中心となって発行した
『新型コロナウイルス感染症
~市民向け感染予防ハンドブック』が
大きな反響を呼んでいますね。
正確な情報の
いち早い提供を心掛けた。
家庭内で感染を防ぐためにはどのような対応が必要か、正確な情報を専門知識のない方々にわかりやすく、いち早く伝えなければと考え、ハンドブックを作成しました。現在、日本語以外に5カ国語で公開されており、ダウンロード数は100万回を超え、WHO(世界保健機関)にも提供しました。
また、さまざまなメディアに出演し、40年間にわたり研究を重ねてきた感染症の知見から現時点でわかりうる情報を発信し、感染予防のための啓発活動に取り組んでいます。
Q2
withコロナ時代の中で、私たちは
どんなことに気を付けて生活すべきでしょうか?
一人ひとりの思いやりが、強いワクチンになる。
ソーシャルディスタンスの確保など、いわゆる三密にならない工夫はwithコロナの時代には必要なものです。しかし、その一方で人と人がふれあう機会が少なくなり、寂しさや辛さによるストレスが増えています。そういった影響を限りなく少なくする方法を専門家だけではなく、国民の方と一緒に考えていかなければなりません。
また、経済活動を回していかなければ社会は破綻してしまいます。今後、ウイルスがなくなることはありません。その中でリスクをコントロールするために大切なのが、個人の意識です。手洗いや消毒、マスクなどによって、自分を守ることが相手を守ることになる。そういった思いやりを一人ひとりが持ち、協力しあうことこそが新型コロナウイルス感染症に対する強いワクチンになります。
Q3
プロ野球とJリーグの
「新型コロナウイルス対策連絡会議」の
座長を務められていますが、
スポーツはお好きですか?
サッカーに
明け暮れていた学生時代。
私は元々スポーツが好きで、大学ではサッカー部に所属し、授業が終わると夜遅くまで練習していました。そのため、スポーツの素晴らしさや現在さまざまな競技が行えない悔しさはとても理解でき、その気持ちを胸に、プロ野球とJリーグの「新型コロナウイルス対策連絡会議」の座長を務めています。会議では競技中や観戦中、スタジアムへの移動間の感染予防などを専門家と議論し、ガイドラインとしてまとめています。これは来年のオリンピック・パラリンピックに向けたモデルにとなり、withコロナの時代にスポーツを安全に楽しむための大きなチャレンジになります。
Q4
医師を志したきっかけや、
感染症分野に進んだ理由を教えてください。
家庭の環境と動物好きだったことが原点。
きっかけは、大きく2つあります。まず、実家が調剤薬局を開業しており、日頃から医療や薬に慣れ親しんでいたこと。もう一つが動物好きだったことで、小学校の卒業アルバムに「将来は動物学者になりたい」と書くほどでした。その後、私の関心は動物がたくさん生息しているアフリカに広がり、シュバイツァー博士や野口英世博士が現地で感染症と闘ってきた歴史を知り、私も同じ道を歩みたいと考えるようになりました。そして実際に大学院を卒業後、アフリカへ渡り、1年間ほどケニア中央医学研究所で感染症対策に取り組みました。
Q5
実際にケニアで1年間
過ごされたのですね!
現地での思い出は?
マラリアに感染。
医学に救われ、
その素晴らしさを体感。
実は現地で私自身がマラリアに感染し、熱が40度近く出て、危険な状態になりました。抗マラリア薬を服用し、何とか救われましたが、その時に感染症の怖さ、そして薬によって治癒できる医学・薬学の素晴らしさを体感しました。この出来事によって、感染症の研究をライフワークにしていこうと気持ちがさらに強くなりました。
Q6 感染症の専門医として印象に残っていることはありますか?
感染症による差別の悲劇を繰り返さないために。
感染症は差別の歴史でもあります。かつて長崎大に勤務していた頃、無症状であるものの、抗菌薬が効かない耐性菌を保有している方がいました。その時点で、特に感染を恐れるような事態ではありませんでしたが、差別を受けたこともあり、その方は住んでいた島を出ることになってしまいました。大勢の人が感染症の正しい情報を持っていれば、この悲劇は起こらなかったはずです。この出来事は強烈に胸に残っており、感染症の正しい情報を広げることの重要性を痛感しました。
Q7 本学にはどのようなイメージを持たれていますか?
お互いに助け合う、穏やかで雰囲気の良い大学。
これまで長崎大学や自治医科大学、東北大学など、4校に勤務した後、昨年4月から本学の特任教授として勤務しています。就任してすぐに思ったことが、学生や教職員、さらに附属病院の医師や薬剤師、看護師、検査技師、放射線技師、看護助手などの医療従事者、受付の事務員の方々皆さんが穏やかで助け合いの精神を持っており、非常に雰囲気の良い大学だということです。全員で協力して、新しい大学をつくりあげようとしているのを感じます。
Q8
教育面の特徴は、
どの辺りに感じられていますか?
理想のチーム医療を学べる、
恵まれた環境の大学。
本学の特徴の一つは約80年の伝統がある薬学部に、医学部が設置されたことです。医薬連携を目指したバックグラウンドがあり、互いの長所がミックスしていると考えています。また、震災のダメージが残り、医師の数が少ない東北地方において、本学が地域医療連携に果たす役割は非常に大きいと感じています。今、地域医療に求められているのが医師、薬剤師、看護師や検査技師など、他の職員と連携したチーム医療です。本学の医学部の学生と薬学部の学生は、2年間小松島キャンパスで一緒に学ぶため、立場の違う人の考えや気持ちを理解することができます。また各地域の病院と連携した学習も充実しています。このような環境で医学を学べる大学は、他にありません。将来、チーム医療を実現する際に必ず役立つはずです。
Q9
医学・薬学の道を志している学生に
一言お願いします。
本学で、医療人として
大切な素養の習得を。
医学・薬学はすべての人を幸せにするための学問であり、病に苦しむ人をどれだけ救うことができるか、どのように守るのか、もし目の前の患者さんが自分の家族だったらどう対応していくのか、考えながら学んでいくことが最も大切です。そのような思いをしっかりと持ち続けながら、ぜひ本学で医師、薬剤師を目指してください。