STUDENTS
INTERVIEW 5

Ike Erina

薬学研究科

池 瑛莉奈 さん Ike Erina

薬学専攻博士課程4年

大学院生として外部競争的資金
(奨学金制度)にチャレンジ、
その内容とは。

医療の未来へと取り組む医学・薬学の徒へと拓かれた奨学金制度には、さまざまなものがあります。今回は、大学等研究機関において、創薬並びに生命科学に関する研究に取り組む大学院生(もしくは大学院研究生)を対象とした外部財団の『奨学金制度』にチャレンジし、見事に奨学金を獲得した院生・池瑛莉奈さんの研究内容やチャレンジの過程について伺いました。

Q1池さんは現在博士課程の4年生ということですが、今現在の主な研究はどのような内容ですか。

はい。現在は肺組織の修復実現に向けて、気管支肺胞上皮幹細胞という肺の組織幹細胞に着目した研究をおこなっています。

Q2肺組織修復についての研究について興味を持たれたのはいつ頃ですか。

5年次の病院実習の際に、原疾患の治療によって薬剤性肺障害を罹ってしまった患者さんがいらっしゃいました。多くの肺疾患は根治療法がなく症状コントロールの対症療法で対応しており、その患者さんの薬剤性肺障害に対しても対症療法しかできず、それにより原疾患の治療自体が思うようにできなくなってしまうというとても辛い思いをしたことがありました。この課題をどうにか解決したいという思いもあり、病態生理学教室で既に研究テーマとして着目していた、肺組織幹細胞による肺組織修復というものに自分も取り組みたいと思ったのがきっかけです。

Q3ご自分の研究の中で特にやりがいを感じる点、おもしろいなと思う点はどういったところでしょうか。

肺組織幹細胞の研究は未解決な課題が多くある分野なので、肺の組織幹細胞に着目し続け、肺組織の修復実現を目指している研究者が少ないのが現状です。そのため、今までの論文に載ってないようなデータが出た際には、自分が1番最初にこれを知ったんだな、と考えるとすごくおもしろいな、と思います。もっといろんな新しいことを発見していけたらな、と思って研究を進めている感じですね。

Q4 今現在、この研究についてご自身の中ではどれぐらいの到達度でしょうか。

まだまだな状況ですね。やはり最終的な目標である、ヒトへの治療応用としての実現に至るまでには程遠いですし、細胞の培養条件下での解明が進んでも、生体内での実際の分化メカニズムなどさまざまなことが解明されていかないと、修復までには至らないので、まだ1合目、2合目というところじゃないかなと思っています。

Q5外部の助成財団に奨学金制度があるということは、もともとご存知だったんですか。大学から情報などもいただけたのでしょうか。

いえ、大学院の最終学年になり、できるだけ研究に集中できる環境にしたかったんです。そこで奨学金制度の活用を考え始めて、調べていく中で初めて知りました。
私は配属教室の教授である高橋知子先生からお話をいただいたのですが、そもそも研究支援課からの情報があって、それで私も応募してみないか、という経緯です。

Q6応募すればどんな方でもいただけるものなのでしょうか。
具体的にはどんな点を工夫されましたか。

希望される方は相当数いらっしゃるはずで、それに対して助成人数は限られていますので、必然的に競争になることはわかっていました。なので、初めから無理だろうって思いがちですが、とにかくチャレンジ精神を持って、まずはやってみようと思うことが大切でした。
申請書を書くんですが、申請書の記入項目が膨大で書きあげるのが大変でした。もちろん研究内容が最も大切ですが、それをどう表現するのか、にも苦労しました。研究目的を実現するための思考プロセスや技能などについても自分の考えを持って表現しなければなりません。先生方にも添削してもらい、何度も書き直し、自分で納得のできる申請書を書き上げるのに、相当時間がかかりました。研究者としても強みなども記入する項目があり、普段から自己分析することも大切なのだと思いました。

Q7申請書の作成一つとっても将来につながる貴重な経験になりそうですね。 どこが評価されたポイントだと思われますか。

実は、このほかにもいくつか応募はしていたんですが、やはり狭き門で。でも、今振り返って考えると、その一つ一つの苦労した経験があってこそ、今回の獲得に繋がったように思います。
また、研究者になると、自分の研究についてアピールし、競争的資金を獲得しなければなりません。その良いトレーニングにもなりましたし、何より、選んでいただいたことが本当に励みになりました。こうして奨学金をいただけるということ自体が、自分の研究テーマをある程度認めていただいたというか、応援していただけてるっていう自信に繋がっています。
どこが評価されたか、と言われるとなかなか難しいですが、新規性という意味では、肺の根治療法を目指した研究というのはなかなかない、ニッチな研究ではあるので、そういったところを評価していただいたのかな、とは思っております。

Q8今回のこの奨学金制度は、他に受けていらっしゃる方々も錚々たる面々で、池さんはとても期待されているのだな、と改めて驚きました。奨学金を得て、変わったことはありましたか。

奨学金いただく前までは、土日は生活費のために薬剤師としてアルバイトをしていました。今はシフト数を減らして、その分研究に使う時間が増え、より研究に集中できるようになったと実感しています。

Q9将来はどのような道へ進みたいと考えていらっしゃいますか。

この大学院で研究に携わってみて、新しいことを見出だすおもしろさや研究そのものの醍醐味を知ることができました。その上で、もう少し臨床寄りで医療の発展に携わりたいという自分の気持ちが生じてきたので、研究職ではなく治験などを含めた開発職へと進んで、ヒトの治療への応用の要になるところに携わりたいと思っています。

Q10後輩の方々、これから本学を目指される方々に向けて、メッセージをお願いします。

私は薬学部入学当初には「こういう研究がやりたい、突き詰めたい」というような強い思いがあったわけではないので、大学院に進むかどうか選択する時悩みました。病院実習などで実際に薬剤師の仕事を体験してみて、薬剤師としてできることにも限りがあるということを痛感した上で、このまま薬剤師になることも選択肢であるけども、もう一方で、研究っていうものと向き合ってみて、自分の道を広げるっていうのもありなのかもしれないと考えるようになりました。また、自分は女性ということもあり、6年間の学部に加えてさらに4年間の博士課程へ進むのには覚悟が必要だったのですが、現在はこの4年間で学べたことはとても大きいと思っています。エビデンスをもって論理的に考える、説明することの重要さや、未知の内容を掘り下げていき新たなことを見つける面白さをすごく実感しながら日々学べています。後輩のみなさんには、何事についても、興味があれば1歩でも進んで挑戦してみてほしいな、と思っています。

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