TMPU ACTIVITIES 4

東北の素材が世界を救うか。
新型コロナウイルスの感染予防に新たな発見

  • 薬学部

    佐々木 健郎 先生 Sasaki Kenroh

    東北医科薬科大学
    薬学部 生薬学教室 教授

地球規模で猛威を振るう新型コロナウイルスに対し、新たな対策の活路となるファクターがこのたび発見されました。それは、「あおもり藍葉エキス」。これは青森県にて農薬不使用で栽培されたタデ藍の葉から抽出したエキスで、抗菌性や消臭性に優れていることから本学の薬学部佐々木健郎教授(生薬学教室)が大いに注目、あおもり藍産業協同組合とともに抗菌・消臭剤を共同開発するなど研究を重ねていました。農作物の病害予防や成長促進効果、抗インフルエンザウイルスなどにも効果が見いだされていた中、佐々木教授と近畿大学医学部病理学教室の伊藤彰彦教授、富山大学学術研究部医学系(計算創薬・数理医学講座)教授・神戸大学大学院医学研究科客員教授である髙岡裕教授らで編成された研究チームによって、「あおもり藍葉エキス」が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質のヒト細胞受容体への結合を阻害することを発見しました。これは、新型コロナウイルスがヒト細胞へと侵入するのを防ぐことに繋がるもので、新型コロナウイルスの感染予防に新しいアプローチが開けたことを意味しています。

新型コロナウイルスがヒトの細胞に侵入しようとするとき、ウイルス表面のスパイクタンパク質がヒト細胞表面にある受容体に結合することが最初のステップ。そこで近畿大学医学部を中心とする研究チームは、スパイクタンパク質と受容体の結合を阻害する成分の発見をめざして研究を行っていました。さまざまな天然物や化合物をスパイクタンパク質と同時に細胞実験系に添加したところ、「あおもり藍葉エキス」を使用した際に、受容体に結合するスパイスタンパク質の量が減少することが分かりました。この結果から、「あおもり藍葉エキス」が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が受容体へ結合するのを阻害するということが明らかになったのです。これは、感染予防だけでなく被感染者の重症化を防ぐ効果も期待できるもの。今回使用したのは2020年を中心に感染が拡大した新型コロナの従来株。オミクロン株など一部の変異株については、細胞培養実験は未実行ではあるけれどコンピューターシミュレーションの解析で結合阻害効果があると確認しています。さらには、エキスを17,300倍に希釈しても阻害効果が確認できたため、人体に十分安全な濃度で使用が可能。本研究の成果を、新型コロナウイルスへの感染を予防する点鼻薬などに役立てるべく、研究が続けられています。

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